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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
並走せよ！ 暁の神速ランナー
「チャラ彦くん！ 朝練のお時間ですよ！ 今日は早めに行きましょう！ ねっ？ ねっ！」
この口調のどこが、使用人から主人への言葉だと思えるだろうか。実にフリーダムに、八十八旗家の運転手を務める霧桐 舞衣は、家の『お坊ちゃま』であるはずの信彦を午前四時前にたたき起こしていた。
「舞衣ちゃん、今何時だと思ってるんだよ！」
八十八旗 信彦は確かに、舞衣に頼んだ。『明日は早めの行動を』と。だが、これはあんまりではないだろうか？ まだ夜も明け切っておらず、窓を叩く小雨の音が憂鬱に響くばかり。朝練は、グラウンドではなく体育館で行われることになるだろう。約、三時間後に、だ。仮に一時間かけてゆっくり朝食を取り、身だしなみを整えて準備をしたとしても、あとの二時間をどうやって過ごせばいいのか。信彦は恨めしげに舞衣を見た。
「はいはい、目が覚めちゃったんなら起きましょうよ。早め早めの行動ってすばらしいと思わないっすか？」
当の舞衣は何か魂胆があるようで、待ちきれないと言うようにそわそわ、うずうずとしている。
「舞衣ちゃん。せめてあと二時間後に」
信彦がやんわりと伝えようとする言葉は、舞衣の怒涛の早口によってかき消された。
「早起きは三文の得、いいっすか、三文の得と言うように、行動は早ければ早いほど尊いっす！ 時間チョッキリより五分前行動！ 五分前より、五分前の五分前、つまり十分前行動っ！ いち早く行動を始める、それだけで自分の熱意、やる気をアピールできるっす！ 俺は本気だと態度で示す、これはライバルたちへの圧倒的なアドバンテージにもなるっすよ！」
ここまで息継ぎのひとつもなくまくし立てる。超人的なマシンガントークに気おされて、信彦が何も言えずにいると、舞衣は大げさにすうう、と息を吸い込んで見せた。
「わわっ、わかったよ！」
自分の負けだ。レディの主張に逆らうことは、紳士としての掟に反しよう。信彦はこうなると舞衣の言葉に従うほかない。息を吸い込む音ひとつで主人を動かすことに成功した稀代の運転手・舞衣は、満足そうににんまりと笑うのだった。
傷や汚れひとつない高級車は、信彦の父が息子の送迎のためだけに用意したものだ。運転席にはうきうきとした様子の舞衣が乗り込み、信彦は後部座席に着く。自分だけシートベルトを締めるや、舞衣はアクセルをぐんと踏み込み、まだ明けやらぬ寝子島を飛ばし始めた。衝撃で信彦の体ががくんと傾ぐが、構う様子はない。
「行きますよぉ！」
「って、もう発進してるじゃないか！」
守るべき主人の頭をがくがくと揺らしながら、舞衣が目指すのは寝子高ではなく、299号線なのであった。
「舞衣ちゃん!? どこに行こうって言うんだい」
「チャラ彦くんを送り届ける前に、ちょっと寄ってみたいところがあるっす！ 付き合ってくださいねぇ！」
返事は求めていない。どうあっても舞衣は目指す方向へと進むのだから！
金戸 幸虎は日課の早朝ランニングの最中だった。今日はたまたま調子が乗って、寝子島街道299号線まで足を延ばした。ただそれだけのはずだったのだ。こつこつと走り込む、いつも通りのトレーニング。だが、街道に入ってから、空気が変わったのを幸虎は感じていた。平たく言うと、騒がしいのだ。
「ずいぶん走っている人間が多いような……」
歩道で待つ者、スポーツウェアに身を包み、本土へ向かう街道をひた走る者。フォームを見れば、相当走りこんでいるのがわかる者もいた。幸虎と同じ陸上部の者もいる。
「そうか、ここ、寝子島街道だっけ。と言うことは神速ランナー……？」
そう言う彼のそばを、一陣の風が駆け抜ける。風圧は起きない。ただ、ものすごく速いものが通り過ぎていった。いや、すり抜けていったと言ったほうがよい。
「うわっ！ ホントにいたんだな……幽霊……」
陸上部でも、誰よりも早いと言う幽霊ランナーのことはたびたび噂となっていた。幸虎も幽霊にまつわる数々の逸話を知っている。しかしこの目で見たのは始めてだ。今となってはだぼだぼすぎて不恰好に見えるランニングシャツとパンツ。短く刈り込んだ髪型。昭和の香り漂うランナーは幻影のような薄ぼんやりとした姿でありながら、はっきりとした足音を立て走る。しかしその足音は小雨の中でも乾いたままであり、走る速度は人間のものではない。同じ長距離ランナーとして、多少の興味はあった。幸虎は爆走する複数の幽霊ランナーと、それに翻弄される寝子高生、その他の面々をいたるところで見ながら走る状態となった。
「あーあー……あいつら何やってんだ」
転んだりしている者も出ている。
この口調のどこが、使用人から主人への言葉だと思えるだろうか。実にフリーダムに、八十八旗家の運転手を務める霧桐 舞衣は、家の『お坊ちゃま』であるはずの信彦を午前四時前にたたき起こしていた。
「舞衣ちゃん、今何時だと思ってるんだよ！」
八十八旗 信彦は確かに、舞衣に頼んだ。『明日は早めの行動を』と。だが、これはあんまりではないだろうか？ まだ夜も明け切っておらず、窓を叩く小雨の音が憂鬱に響くばかり。朝練は、グラウンドではなく体育館で行われることになるだろう。約、三時間後に、だ。仮に一時間かけてゆっくり朝食を取り、身だしなみを整えて準備をしたとしても、あとの二時間をどうやって過ごせばいいのか。信彦は恨めしげに舞衣を見た。
「はいはい、目が覚めちゃったんなら起きましょうよ。早め早めの行動ってすばらしいと思わないっすか？」
当の舞衣は何か魂胆があるようで、待ちきれないと言うようにそわそわ、うずうずとしている。
「舞衣ちゃん。せめてあと二時間後に」
信彦がやんわりと伝えようとする言葉は、舞衣の怒涛の早口によってかき消された。
「早起きは三文の得、いいっすか、三文の得と言うように、行動は早ければ早いほど尊いっす！ 時間チョッキリより五分前行動！ 五分前より、五分前の五分前、つまり十分前行動っ！ いち早く行動を始める、それだけで自分の熱意、やる気をアピールできるっす！ 俺は本気だと態度で示す、これはライバルたちへの圧倒的なアドバンテージにもなるっすよ！」
ここまで息継ぎのひとつもなくまくし立てる。超人的なマシンガントークに気おされて、信彦が何も言えずにいると、舞衣は大げさにすうう、と息を吸い込んで見せた。
「わわっ、わかったよ！」
自分の負けだ。レディの主張に逆らうことは、紳士としての掟に反しよう。信彦はこうなると舞衣の言葉に従うほかない。息を吸い込む音ひとつで主人を動かすことに成功した稀代の運転手・舞衣は、満足そうににんまりと笑うのだった。
傷や汚れひとつない高級車は、信彦の父が息子の送迎のためだけに用意したものだ。運転席にはうきうきとした様子の舞衣が乗り込み、信彦は後部座席に着く。自分だけシートベルトを締めるや、舞衣はアクセルをぐんと踏み込み、まだ明けやらぬ寝子島を飛ばし始めた。衝撃で信彦の体ががくんと傾ぐが、構う様子はない。
「行きますよぉ！」
「って、もう発進してるじゃないか！」
守るべき主人の頭をがくがくと揺らしながら、舞衣が目指すのは寝子高ではなく、299号線なのであった。
「舞衣ちゃん!? どこに行こうって言うんだい」
「チャラ彦くんを送り届ける前に、ちょっと寄ってみたいところがあるっす！ 付き合ってくださいねぇ！」
返事は求めていない。どうあっても舞衣は目指す方向へと進むのだから！
金戸 幸虎は日課の早朝ランニングの最中だった。今日はたまたま調子が乗って、寝子島街道299号線まで足を延ばした。ただそれだけのはずだったのだ。こつこつと走り込む、いつも通りのトレーニング。だが、街道に入ってから、空気が変わったのを幸虎は感じていた。平たく言うと、騒がしいのだ。
「ずいぶん走っている人間が多いような……」
歩道で待つ者、スポーツウェアに身を包み、本土へ向かう街道をひた走る者。フォームを見れば、相当走りこんでいるのがわかる者もいた。幸虎と同じ陸上部の者もいる。
「そうか、ここ、寝子島街道だっけ。と言うことは神速ランナー……？」
そう言う彼のそばを、一陣の風が駆け抜ける。風圧は起きない。ただ、ものすごく速いものが通り過ぎていった。いや、すり抜けていったと言ったほうがよい。
「うわっ！ ホントにいたんだな……幽霊……」
陸上部でも、誰よりも早いと言う幽霊ランナーのことはたびたび噂となっていた。幸虎も幽霊にまつわる数々の逸話を知っている。しかしこの目で見たのは始めてだ。今となってはだぼだぼすぎて不恰好に見えるランニングシャツとパンツ。短く刈り込んだ髪型。昭和の香り漂うランナーは幻影のような薄ぼんやりとした姿でありながら、はっきりとした足音を立て走る。しかしその足音は小雨の中でも乾いたままであり、走る速度は人間のものではない。同じ長距離ランナーとして、多少の興味はあった。幸虎は爆走する複数の幽霊ランナーと、それに翻弄される寝子高生、その他の面々をいたるところで見ながら走る状態となった。
「あーあー……あいつら何やってんだ」
転んだりしている者も出ている。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年09月18日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年09月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年09月25日 11時00分
