＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編

　布袋猫を探しにショッピングモールへ寄ったその帰り、遠野まほろは差し出されたプレゼントに眠たげな瞳をぱちくりと動かした。その視線の先に居るのは、白銀の髪の少女、ミルカである。ミルカはにこりと笑った。まほろが視線を下に移すと、じっとまほろのことを見るサンタ猫の姿がある。

「ショッピング帰りのお姉さんも、おひとつどうぞ」

　まほろは恐る恐る受け取りつつ、足元で鳴いている猫たちに思わずこう訊いた。

「あなたたち、もしかして布袋猫のこと、知ってる……？」

　その言葉に、ミルカはぴくりと肩を震わせる。まほろはその様子から知ってるのかと推測して、続けた。

「私も今、探してるんだ……」

「おー、せなんや。意外と探しとる人おるんやねぇ」
「うん。布袋様のご利益は商売繁盛・家内安全……だから、ショッピングモールにいると思って探してみたんだ」
「なるほど……！　どうでしたか？」

　みゃう。にゃおお。ごろごろ。
　三人は並んで、布袋猫のことを話し合う。その足元で、猫が気儘に鳴いていた。まほろはがっくりと肩を落として口を開く。

「見つからなかった……人が多いから、やっぱり探すのは大変……」

　んー、とまほろは伸びをして、続けた。

「でも……ショッピングモールにいないとしたら、アウトレットの方に居るかも……って思って」
「なるほどなぁ。ほな、そっち行ってみよかぁ」

　そうしてあきらが立ち上がりかけたその時、サンタ猫が一斉にどこかをじっと見てそわそわとしだす。

「あれ？」
「どないしたん？」
「サンタ猫が、一斉にどこかに……」
「もしかして、布袋さん出てきたんかなぁ。追いかけよか」

　そしてさあっとその方向に走り出した。それに気付いたミルカが三人を連れて追いかける。辿り着いた先は、人通りの少ない並木の陰だった。

「なんや、ちゃうんか」
「これ、マタタビパウダーだ……」

　にゃおおん。
　サンタ猫たちはそこでごろごろと気持ちよさそうにマタタビに酔っている。まほろがそう言うと、ミルカが首を傾げた。

「いったい、誰が撒いたんでしょう？」

「ここも違ったか……」

　ネットカフェや英会話教室の立ち並ぶ一角で、銀髪の男、サキリ・デイジーカッターは呟く。

「『グローバル化』なんて単語が出てくるくらいだから、こういうところにいると思ってたけど」

　当てが外れたのか、サキリは溜息を吐いた。そして近くのベンチに座って考え込む。
　――楽しそうなことがあれば声をかけてくるかも、か。
　にゃおおん。なああん。
　遠くから聞こえてくる猫の鳴き声を右から左へ流しつつ、サキリは考え事を続けた。一般人の目に触れそうだったサンタ猫たちは、今はサキリの細かな誘導によって人目につかない場所に集められている。一時的な効果ではあるが、まだ時間に余裕はあるだろう。
　――そういえば最近流行のカプセルギア……僕はやった事ないけど、あれは見ているだけでもかなり楽しい。もしかしたら……。

「とにかく、場所を変えよう」

　サキリは立ち上がり、街の中へと消えていった。