＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞布袋猫を探せ編

　にゃああん、にゃおおん、にゃごお。
　シーサイドタウン駅の周辺で、二足歩行の猫がずりずりと白い袋を引きずっている。猫はぺたぺたと歩き回り、時折立ち止まってはきょろきょろと辺りを見回していた。

「あれ？」

　ききぃとブレーキの音が鳴って、綾辻綾花の自転車が止まる。彼女の視線の先には、サンタ猫たちと同じ格好をした、見知った猫が居た。

「クロワ！」

　飼い主に名前を呼ばれて、クロワはくるりと綾花の方を向いた。耳をぴこぴこと動かしながら、にゃおんっと鳴く。綾花はふふっと笑って、スマホを構えた。

「可愛いです……！」

　綾花に褒められて、クロワは機嫌よくにゃおーんと鳴く。袋をてしてしと叩いたり、ごろごろと気儘にポーズをとっているクロワを、綾花はカメラを連射してとらえる。そうしていると、クロワの周りにサンタ猫仲間が集まってきてごろごろとじゃれあいだした。これには綾花もほんわりと微笑する。

「なんだか楽しそうでよかったです……」

　にゃおおん、にゃごお、にゃあん。
　聞こえてくる鳴き声を辿ると、サンタ猫の集会があった。恵御納夏朝はそこへそそと近付いて、しゃがみ込む。そしてその猫が転がったり、毛づくろいをしたり、ぶにゃっと膨れてるのを見て沸き起こる感情を、そのまま呟いた。

「サンタ猫さん達……可愛い……！」
「ですよね……癒されます……」

　お互い猫好きの性か、そのまま暫く眺めていたのだが、遠くから聞こえる何気ない声にはっと顔を見合わせる。

「ねえ、アレ何？」
「かわいいー！　イベントかな？」
「遠くてよく見えないなぁ」

　夏朝は慌てて立ち上がり、猫の中で一般人の方へ行こうとしているサンタ猫を抱きかかえた。

「一般の人に見つからないよう気を付けないと……！」
「手伝います……！」

　夏朝に抱きかかえられて長い胴をのびのびだらりと垂らしている猫は、突然のことに目をかっと見開いている。夏朝はそれに謝りながら、ちょうど生け垣の影を見つけて降ろしてやった。

「ごめんね、猫さん」

　降ろされた猫は芝生でごろごろとしつつ、人目を離れて何処かへいく。ほっとしながら夏朝は、綾花とともにサンタ猫を一般人の目の届かないところへと誘導した。

「後で遊んであげるから……！」

　それが一通り終わると、綾花はクロワを抱きかかえ、自転車のカゴにひょいと入れる。その前足がちょこんとカゴの前に乗った。

「綾辻さんは……どっちに行くのかな？　僕は大学の方を探してみようと思うんだけど」
「そうですね……」

　綾花はちらりと、サンタ猫たちを見て言う。

「新しい物好きな気がします。ですので、アウトレットの辺りを探してみます……」
「そっか。僕も、後で向かうよ」
「では、後ほど合流しましょう……！」

　夏朝はクロワを一撫でしてから、大学の方向へ。綾花はそのまま、アウトレットの方へと歩を進めた。
　にゃおおん、にゃごお。
　サンタ猫が大きな袋を引きずりながら鳴いている。

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