深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会｜リアクション

深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会

「うわあ……。やっぱり先生になっちゃったのね。ちょっとくやしい、けどインパクトではかなわないかぁ」
　一足先に女神の『正体』を見てしまった少女、古館苺花は声をあげる。今初めて津止先生の仮装を見て、本日最大のショックを受けている人も多いのだろう。
「まああれは驚くわよね……てか、先生よく恥ずかしげもなくやったわ。ね？」
振り向いて、目が合った御陵春哉に同意を求める。
「ああっ、は、はい。先生すごかったですね。びっくりしました」
春哉は従者の仮装のままだ。見覚えのあるような、ないような、たぶん先輩のような苺花に話しかけられ、まじめな春哉はかしこまって答える。
「あらぁ？　あなた……」
苺花は春哉をまじまじと見る。やや幼い、けれどととのった凛々しい顔立ち。中世の騎士見習いのような格式ばった衣装がよく似合っている。苺花のかわいい子センサーがびんびんと反応していた
（美少年？　なら大歓迎！　美少女？　それだってすてきだわ。つまり、どっちでもオッケー！）
「かわいいわ！　すっごくいいわ！　やーんもう、苺花ここまで猛スピードで走ってきて疲れてるの！　かわいい子の癒しがほしいわー！」
「わわっ！？」
苺花は春哉に飛びついた。ぎゅっと抱きしめ、頬ずりする。
「わー！　わー！　待ってください！　私女です！」
「そんなの関係ないわ！　かわいい子に触れて癒されたいのよー！」
「おーい御陵、お待たせ、お疲れ。屋台でおいしそうなの見つくろって買ってきたぜ……って？　は!?」
側近・春哉と共にクエストを乗り越え、すべての旅を終えた王子ルックの桜井ラッセル。ゴールしたあとはなりきりも終了、春哉を休ませて食料調達には自分が出るべきと紳士らしさをみせた彼であったが……戻ったラッセルが見たものは、派手でキラキラのレースクイーンに文字通り絡まれてもがいている春哉の姿であった。
「桜井、さん……いえ、王子……逃げてくださいぃ……」
「いや逃げろって、どうなってるんだ御陵!?　その人誰!?」
苺花の目がきらりと光る。新たなターゲットにロック・オン。金髪、さわやかフェイスの王子様……自分よりはるかに背が高いから『かわいい』とはいかないが……繊細な雰囲気だ。
「こういうのも悪くないわ！　美形王子さまと美少女従者に囲まれて！」
「な、何言ってんだこの人!?　御陵、どうすりゃいい？」
「お逃げください王子いいいい！」
「逃がさないわよ！　かわいい子はみーんな苺花のものなんだから！」
「わあ！　待て、やめろ！　焼きそば落としちまう！」
「王子……最後に一口焼きそば食べたかったです……」
ラッセル、春哉、苺花の騒動はもう少し続きそうだった。かわいかったのが運のつき。