深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会｜リアクション

深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会

　十位からの数人はどやどやと、まとまって入ってきた。海賊ルックの神無月文貴は、サーベルを振り回す鳳翔皐月を担いだままでゴール。
「どけどけ！　こいつけが人なんだ、すぐに手当てを頼む」
「大げさにするな！　もうゴールしたんだろ、さっさと降ろせえ！」
文貴はわめく皐月を担いだまま早々にトラックから退場していく。それに続いて笑顔でガッツポーズの十文字若菜がゴールを切った。拍手に迎えられながら、若菜は誰もいないはずの空を見る。さっきまで自分を見守ってくれていた、幸運の妖精がいた場所を。

（羽衣ちゃん！　ゴールできたよ。応援ありがとうね！）

　入賞者をたたえる歓声に沸くスタジアムを、鴇波羽衣は少し離れたところから見ていた。まとっていたヴェールと天女のような羽衣（はごろも）は、今はもうない。
（これでいいんだ。あたし、みんなを応援できた。力になれたはずだって信じてる）

　羽衣はろっこんの力『ういのはごろも』で空を飛んだ。マラソンで速度を出せる自信は彼女にはなく、それでも海賊組のみんなを応援したくて、力になりたくて。結果彼女が選んだのは、空から仲間を見守ることだったのだ。コースをはずれ、高台に昇り、そこから跳んだ。『ういのはごろも』の力が彼女を本物の妖精にする。ヴェールと羽、大きな羽衣（はごろも）の力で、羽衣は自由に天空を舞った。
（シグレせんぱい、こまちせんぱい、ねむるくんの海賊同盟。でこぼこに見えるけど、クエストでは一つになってた。ほんとうの仲間だったね）
（征一郎せんぱいと剛せんぱいのかっこいいコンビ。レース中のパフォーマンスは本当の海賊のバトルみたいだった。みんなとっても楽しんでいたよね）
（組長さんと皐月さんは、たぶん真っ先にゴールしちゃうね。皐月さん、照れてたけどちょっとうれしそうだったな）
（ピーターパンつながり、タイガーリリーのるるちゃん。みんな注目してたね、いちばん可愛かったよ！）
（若菜せんぱい、豪せんぱい、瑞鶴せんぱいの2-3トリオは、ばらばらに走ってたけど、どこかつながってる感じがした）
空を飛ぶ羽衣は、見守りたかった仲間すべてのがんばる姿を見届けることができた。が、仕掛けで空を飛んでいると判断され、マラソンは失格となってしまった。
（失格でもちっとも残念なんじゃかじゃないよ。あたしの『かそマラ』はこれでよかったんだもん！）
さあ、もう行こう。みんなが待ってくれているはずだ。羽衣は笑顔でスタジアムへと駆け出した。