this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
水底の世界
<< もどる
1
…
6
7
8
9
10
つぎへ >>
願いを問われ、蛟は牙の覗く顎をもぐもぐと動かした。言葉にならぬ声を発しては首を傾げるユニの姿に、月詠はそっと瞳を細める。錯乱の色ばかりを揺らめかせ荒れていた蒼い瞳は、今は静かに凪いでいる。
「ユニ」
先代に魔女のようだとさえ言わしめた少女は、それこそ魔女じみて蛟に語りかける。元の姿に戻れと。
蛟の額に白い額を寄せ、静かな声を響かせる。
「己の姿をイメージしながら、内に眠る力に働きかける……アレス翁と同じ力を持つ君ならば可能だ」
白い魔女の声に従うように、蛟を蛟と成さしめんとする蒼い鱗がシャラシャラと音たてて剥がれてゆく。鱗は水より蒼い水となり、少年のかたちとなる。
蒼い髪と目を持つ少年は、月詠と間近に瞳を合わせたまま泣き出しそうな顔で笑った。
「……ありがとう」
力失くしてその場にへたりこみそうになる少年の腕を、近くで少年の変化するさまを見守っていた能美子が掴む。
「ごめんなさい」
蒼白い頬を歪める少年に、能美子は黒髪を揺らして緩く首を横に振った。瓦礫の上に倒れこみそうな背を支え、黒い瞳を静かに美しく和らげる。
「ユニ君!」
こけつまろびつしながら瓦礫の上を五月が駆けてくる。眼鏡がないせいでぼやける視界に足を取られ、何度も転んだ挙句、もどかしげに水を掻いて水中を飛ぶように泳いでくる。
「五月、……っ、うわっ?!」
飛びつかれ抱きしめられ、両頬に手を当てられ顔を覗き込まれ、ユニはわたわたと慌てた。それには構わず、五月はユニの頭や頬や肩や背中をぺたぺたと触る。
「怪我、してますね」
蛟となっていたときに負った怪我は、ひとの姿となっても何かしらのかたちで残るものらしい。小さな身体のあちこちに滲む赤い血の色に、五月は頬をきゅっとすぼめた。
「でも、痛くないよ。手当してくれた兄ちゃんや、なんか不思議な力使ってくれた兄ちゃんのお陰だ」
蛇身の身に手当を施してくれた白露を見、ろっこんで痛みを麻痺させてくれた武道を見、ユニは神妙な顔をする。ありがとうと繰り返すユニの顔を再び覗き込んで、五月はそっと息を吐いた。安堵と同時、うっかり妹にするようにごしごしと頭を撫でる。
「逆鱗、砕いてしまいました。痛くないですか」
「へいき。怖い思いさせてごめんなさい」
撫でる手から逃げるように深く頭を俯けられ、五月はちょっと眉を下げて困った顔になる。伏せられた瞳を追いかけるようにしゃがみこみ、今度は腕を上げてまたユニの頭を撫でる。
「お腹、空いてませんか」
たくさん動いてたくさん泣いたから、きっとお腹が空いている。それに、
(寂しい時もお腹がすきます)
両親が営む蕎麦屋を手伝ってきて、よく知っている。お腹ぺこぺこでお店に入ってくるお客さんはみんな大体しょんぼり疲れた顔をしている。
(洒落たことは言えませんけれど)
美味しいお蕎麦や天ぷらを食べてお腹がいっぱいになると、悲しかったり険しかったりしていたどのお客さんの顔も少しは和らぐ。
「寝子島で、一緒にご飯、食べましょう」
「ごはん」
ユニは不意をつかれた顔をした。初めて空腹に気づいたように自分の腹を抑える。へにゃり、力が抜けた笑顔を見せる。
「ありがと、五月」
やっと笑えたユニの手を、別の手が包み込む。傍らに跪き、真剣な瞳で身体の傷を確かめては適切な応急処置を素早く施してくれる若菜に、ユニは困ったように眉を寄せる。
「痛くないよ、へいきだよ、若菜」
「それでも、怪我は怪我だよ」
傷ついた少年の身に包帯を巻き、絆創膏を貼る。大人しくされるがままになるユニの傍ら、莉鳥と璃亜が膝をついた。視線の高さを合わせてくれる少女ふたりに、ユニは目を伏せる。どうして誰も彼も、こんなに優しいのだろう。
「おれ、みんなに怪我させたのに」
「みんな言ってるけど、……私たちはあなたの味方よ」
莉鳥が静かに微笑む。包み込むように抱きしめ、宥めるように背中を叩く。
「……何があったのか話して貰えますか?」
莉鳥の言葉を璃亜が継ぐ。アレス翁の欠片である小魚からあらかたの事情は聞いていたけれど、そこからユニの境遇も何となく察してはいたけれど、ユニの口から直接話が聞きたかった。
「ねえ、何があったか話して」
莉鳥が重ねる。
ユニを寝子島に呼んでほしいとのアレス翁の願いは聞いている。おそらくはそれが『正しい』解決方法なのだろうということも分かる。それでも、莉鳥はユニの考えが聞きたかった。あなたの味方なのだと伝えたからには、最後までユニの味方でありたかった。
莉鳥の真摯な問いかけに、ユニはぽつりぽつりと零す。
大切な人がいなくなったこと。
もう誰も傍にいてくれないこと。
だからぜんぶ終わらせようと思ったこと。
ユニの告白を、璃亜は息の詰まる思いで聞く。胸の十字架を両手に握りしめる。今のユニは、両親を亡くした頃の自分だ。自分を引き取って育ててくれた祖母を亡くした頃の自分だ。
大切な人がいなくなった。
一人ぼっちで寂しくて、寂しくて寂しくて、
「孤独のあまり死にたいと思った事は私もあります」
話そうとした声が嗄れて、璃亜は一度咳払いをする。知らず泣き出しそうになる瞼をきつく閉ざす。
「でも孤独だと思ってても実際周りをよく見ると、話を聞いてくれてる人はちゃんといます。孤独なんて事はないんです」
思わず早口になった。けれど言葉はきちんと、今度はちゃんとユニに届いた。
こくり、ユニが頷く。璃亜が周囲に巡らせる視線を追い、水底に集ってくれた寝子島の人々を見回す。
「うん。……よくわかったよ」
「さて――お茶会の開会といこう」
少年を蛟からひとの姿に戻したことなど何でもないことのように、月詠が宣言する。お茶はないけど、と悪戯っぽく笑いながらその場に集った人々を、こちらも無い席につくように促す。
その場の全員がそれぞれどこかしらに落ち着いたことを確かめ、月詠は重ねて問いかけた。
「ユニ君はどうしたい?」
「おれ、は」
白い魔女のような月詠のまなざしを受け、ユニは蒼い瞳を伏せる。
「……誰も居ないところを護るのは嫌だ。誰も居ないところに居るのはもう、嫌だ」
うつむいたまま、それでも己はもう水の中でしか生きられないのだと呻く。そのようにアレスが身体を変化させたのだと。寝子島に行ってもやはりひとりで水底に沈んでいるしかないのだと。
「……独りが嫌なら、星幽塔に行ってみたらどうだ?」
暗く籠るユニの声音を払うように、澄んでよく通る悠月の声がさらりと響いた。瓦礫の山の一角に腰を下ろした格好で、悠月はユニの不思議そうな視線を受け止める。
「世界はひとつだけじゃない。いろいろな世界が隣り合って関わり合って存在している」
悠月の言葉を捕捉するのは、その隣で油断ない瞳を町の空へと向けていた遥斗。
「寝子島は、そのいろいろな世界と繋がりやすくなっている。幾つもの世界があって、守るものはたくさんある」
自分以外に守るべきものがないというのはとても辛いことだと遥斗は思う。何かを護るための存在であると己を定義している者であるのならば、誰もいない世界を抱え込むのは、それは尚更だろう。
次の言葉を考え黙する遥斗にちらりと笑みを向けてから、悠月は続ける。
「星幽塔には海の階層もある。巨大な喋れる竜が住んでいたりもする。きっと、水の底に居ても独りにはならないと思うんだが」
子供がどんな答えに行きつくのであれ、選択肢は増やしてやりたかった。
遥斗が再びゆっくりと言葉を紡ぐ。
「俺たちと一緒に、守ってくれないか」
寡黙な少年は真摯な瞳をユニへと――己の守るべきものがないとした世界を己諸共潰してしまおうとした子どもへと向ける。
「ユニにも、手伝ってほしい。俺たちの世界を見守ってほしい」
そうすることで、多くの人と出会える機会を得ることができる。独りではないと知ることはきっと出来る。
子供の不安げな眼差しに、悠月が榛の瞳を和らげる。
「それでも寂しくなったら呼べばいいだけだろう」
「呼んで、いいの?」
見ろ、と赤銅の睫毛に縁取られた瞳を周囲に巡らせる。
「お前を心配してくれてる奴は結構いるみたいだぞ」
「そうです、会いに行きます……!」
銀の髪と胸元に提げた十字架を揺らし、璃亜がつとめて明るい声をあげる。
「なんならアレスさんがやってたみたいにいきなり呼び出して貰っても構いませんよ」
「私も会いに行くし、寝子島の案内もしたいし、」
砕けた石畳の上に膝を折っていた智瑜がふわりと水中に浮き上がる。蒼い水を渡り、ユニの傍らに立つ。
「希望があれば眠るまで子守唄もうたうから」
そっと囁きかける。
幼いころに両親を亡くし、自分は一人なのだと泣いて心を閉ざしていた時期がある。ユニが泣いて暴れた気持ちも痛いほどに理解できる。でも、
(辛いのは私だけじゃなかった)
『残されてしまった』のは自分だけではなかった。傍らを見れば、背中を撫で続けてくれる祖父がいた。抱きしめて一緒に泣いてくれる祖母がいた。
あのとき祖父母がしてくれたように、智瑜はユニを胸に抱きしめる。背中を優しく叩く。
「ユニくんの心にはお爺ちゃんは生き続けてるから……二人一緒に寝子島に来ませんか?」
小さな身体を抱きしめながら、考える。水中で生きるように変化しているのならば、陸で生きられるように変化することもまた可能なのではないか。
胸からユニを離して思いつきを伝える。
「体調を見ながら、少しずつ陸に慣れていくとか、できませんか」
「力の使い方を覚えれば、夢のように地上で住むことも可能なのではなかろうか」
白い掌をひらり翻し、月詠が動じぬ声で真紅の瞳を瞬かせる。
「アレス翁は本体を封印して端末で活動していただろう? それの応用さ」
皆の意見はほとんど一致している。
――ユニをここから連れ出したい
(アレス翁のオーダーを聞き届けたい)
月詠は町の空を仰ぐ。己が死して尚、己の欠片に宿った力を尽くして暴走するユニを止め、町を包囲する『水』から町とユニを護り続けた、『町を護る巨獣』。彼の最後の願い通り、ユニを寝子島に招いてやりたい。フツウの人として暮らすことは出来なくとも、寝子島に生きる不思議の住人たちのように様々なひとと関わりながら生きてほしい。
「なぁに、心配はない」
白き魔女は笑う。
「寝子島には既に神が落ちてきたのだ。今更不思議な住人が増えたところでどうという事はない」
誰かに会いたくなればいつだって会いに来ればいい。居場所をどこに定めようと、そこに誰を招待しようと構わない。だって、
「君は自由だ」
生きているからには、自由に生きていいはずだ。
自由を謳歌せよとの家訓に則る月詠の心強い笑みを貰い、自分を囲む寝子島の人々の優しい眼差しを貰い、ユニの白い頬が歪む。笑おうとして失敗する。ぽろぽろと溢れた涙は頬を伝い水中に透明な水珠となって浮かび上がる。
自分が泣いていることを不審に思い首を捻るユニの頬に、若菜が手を伸ばす。
「私が泣いた時、こうして涙を拭ってくれたよね」
「おれの手、冷たいよ」
「温もりはちゃんと伝わってる」
温かな掌で涙を拭われ、ユニはしゃっくりあげた。
いくつもの温かな掌が、己を救おうとしてくれている。
「どんな形でもいい。貴方には『生きて』欲しい」
「いいのかな、……おれ、生きてていいのかな」
「このままユニ君が死んでしまったら、アレスさんはとても悲しむと思う……大好きな人を泣かせてしまうのは、嫌だよね?」
そう言う若菜が泣きそうな瞳をしていて、ユニは唇を引き結ぶ。嫌だ、と蒼い瞳にまとわりつく涙を振り払う。
「ユニ君。貴方の本当の願いを、私達に訊かせて?」
願いから、その心から、ユニを導く光は生まれる。若菜はそう信じる。
ユニの足元、少年を護るように僅かに残った蒼い鱗を掌に拾い上げる。蒼い水よりも温かな光纏ったその鱗を、春に咲く優しい花の花弁のようにふわり、散らす。
舞い散る鱗と同じに、ふわり、涙が零れて落ちた。それを隠して、若菜はユニを抱擁する。
たとえこれから、この子が何処へ行こうとも。
離れていても心は共にあると、そう伝える確実な言葉を若菜はひとつしか知らない。
「お二人のこと、ずっと愛してます」
ありがとう、と優しい声でささやかれ、ユニは目を丸くして首を横に振る。
「それは、おれの言葉だ」
<< もどる
1
…
6
7
8
9
10
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
水底の世界
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
前回シナリオ
水底の廃墟
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年12月15日
参加申し込みの期限
2017年12月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年12月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!