春の桜に願いを込めて｜リアクション

春の桜に願いを込めて

●願いの行く先
　ばーん、と教室のドアが開け放たれる。
　そこには若干埃にまみれた龍八の姿。次の授業の準備中だった美和はびっくり。
「久保田先生……『桜の栞』を見つけました……」
　弄るためには労力を惜しまない男、龍八。疲労困憊気味のようだ。
　授業の時間中ずっと、図書室にこもってありとあらゆる場所を探していたらしい。
「久保田先生は結婚がしたい……なら俺は栞を贈り、先生にお幸せになってもらおうと思います」
　幸せにな……と黄の瞳を怪しく光らせる。
「さあ受け取って下さい！」
　差し出したのは、色褪せてボロボロになった桜の栞。
　そこには『私はババァだ。結婚しよう！』と書かれている。
「今、熟女の異形ブームもある。チョメチョメでも熟女ジャンルがあるご時世……ババァがＯＫなマニアいるし……。
『桜の栞』のご利益で結婚へ……完璧だな。アギャ、ハハハァッ！」
　両手を震わせ邪悪な笑みを浮かべ外道のポーズ。笑い方まで完璧だ。
「もしかして……今まで栞を探してくれてたの？」
「ええそうです！」
　その言葉を聞くと美和はぱっと笑顔に。あれ？
「いやいや嬉しいよー！　皆から思ってもらえて先生、本当に幸せ者だなー……あ、何か泣けてきたー」
「なん……だと……」
　先生のことを考えて行動してくれた事実はやはり嬉しいもの。
　ちょっぴり目元をぬぐった美和は笑顔。
　予想外の反応に、龍八はしばらくそこから動けなさそうだった。

（またか！　今日は決定的瞬間に出くわす日か……！）
　その光景を見たのは刀だった。
　草薙と美和先生、二人きりで何を……と見たら美和先生が泣いていた。
　何だこれは。
　まあ、待て、落ち着け俺。と深呼吸。
　流石に生徒と先生が云々は考えすぎだろう？
「あの……」
　苦悩している刀に一人の生徒が話しかけた。ちょうど良い、他の人の意見を聞きたい。
「すまない、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
　そこで言葉が途切れる。視線の先に居たのは治。
　真っ直ぐ、意志を持った瞳でこちらを見ていた。
「ねえ、御剣君」
　一歩。治は踏み出す。
「私の栞、貰ってくれませんか？」
　差し出されたのは淡い、桜色の栞。治の瞳は刀から外れない。
「え……？」
「なんと無く、あなたに持っていてほしくなったんです。私の希望」
　白い頬を僅かに紅潮させふわりと微笑む。
　それはいつもの笑顔とは違う、たった一人に向けられる、乙女の微笑み。

　開いた窓から風が入り、桜の花びらが舞い込む。
　一人一人の春が今、色付き始めた。

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あとがき

担当マスター：片桐久乃
ファンレターはマスターページから！

皆様のアクションにはほのぼのしたり感動したり、度肝を抜かれたりと予想外のことばかりでした。
お一人お一人のキャラクターの個性がとても素敵で、執筆も楽しかったです。

マスターとしてのリアクション第一弾を書きあげることが出来、充実感でいっぱいです。
ただそれと皆様の満足感とは別。今後より一層リアクションの質を高めていければと思います。

皆様ご参加くださり、書かせて頂き本当にありがとうございました！
またお会いできれば幸いです。

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