●春色の目標
「今日の授業は春らしくいくよー!」
教室内に響くのは
久保田 美和先生の声。そう、今日は国語の授業だ。
「春っていっても、人によって色んな春があるよねー。中でも学生は入学式、進学と、授業内容や周りの状況も変わって、今までとは違う新しいことが始まる季節だと思うのよ。そこで、これ!」
「……しおり……?」
かく、と不思議そうに首を傾げて
シルヴィア・Wが呟く。
美和先生が教室の中ほどに掲げたもの、それは手のひらサイズほどの栞に見えた。
淡い桜色の栞。オッドアイの瞳をぱちぱちと瞬かせる。
「その名も『桜の栞』! ここにね、皆に書いて欲しいことがあるんだ」
カカッと美和先生がチョークを走らせ、深緑の黒板に白の文字が並んだ。
【自分が思う、理想の自分】
「あ、そんなにかたっ苦しく考えないで良いよー? 」
前置いて説明が始まる。
栞には、この一年でなりたい理想の自分を書くらしいこと。
勉強のこと、部活のこと、家のこと、友達のこと、恋愛のこと(やけに長めに語っていた)、将来のことなら何でも、いくつでもOKなこと。
栞を選んだのは、いつでも目標を持ち歩くことができそうだからということ。
説明し終わった所でチョークの粉を景気良く払い、美和先生はふふーんと楽しそうな笑顔で席に座る生徒達を見回す。
新入生の姿が圧倒的に多いが、ちらほらと上級生もその中に混じっていた。
寝子島高校は単位制だ。
クラス学年問わずのオープンな授業もこうして存在する。
「書き終わったら3、4人くらいのグループになって語り合ってねー。あ。今日は天気も良いし、桜の下で授業しよっか!」
にこーと人懐っこい笑顔を美和先生は見せた。
「『桜の栞』って……なに……」
「よくぞ聞いてくれたシルヴィアちゃん! この栞には寝子高の桜の花びらが入っててね、毎年寝子島高校の図書室で作ってる物なんだ。まあそれだけじゃなくて。『桜の栞』には伝説があってね」
言いながら、夢見る乙女のようにそっと頬に手を当てる。
「『桜の栞』をプレゼントすると、その栞を贈られた人には幸せが訪れるって、もっぱらの噂なのよー。相手の幸せを願ってプレゼントするってロマンチックじゃない? 好きな人にあげるとかねー」
だから栞が出始めても入手は困難。
図書室にもほぼ残ってないのよねー、とそのままのポーズでため息をつく。
「先生は……もってない……?」
「それが持ってないのよー。まあ手に入れたらすぐ友達……うん、友達に渡しちゃうし。この前もね、わたしが栞を贈った人がその後すぐ結婚したんだよねー。ほら、結構信憑性あるでしょ?」
上級生は気付く。あれ……美和先生、去年もそんなこと言ってなかったか……。
それじゃそろそろ書こうか、と明るく美和先生は告げる。
「さあ。君は将来、どんな自分に会いたいのかな?」
初めまして、新人の片桐久乃(かたぎり・きゅうの)と申します。
今後ともよろしくして頂ければ幸いです。
今回は春らしい授業を、ちょっとした伝説と共にお送りいたします。
◆行動例◆
・理想の自分を栞に書く
・誰かに栞を贈る
・誰かと栞を交換する
・自分だけのオリジナル栞をつくる
・皆と将来について語る
・のんびりお花見をする
・猫と日向ぼっこする
・美和先生と絡む
・授業をさぼる
◆注意点◆
・ガイドにもある通り、この授業はクラス学年問わず参加が出来ます。
・『桜の栞』は1人に付き1枚となります。
特に提出は求めないようなので、栞は取っておいても構わないそうです。
・栞を作る場合、画用紙や色ペンくらいならば貸してくれるようです。
・ランダムに3,4人でグループ分けをします。
あらかじめ組みたい方が決まっていればGAをお使い下さい。
・お菓子や飲み物を持ってくるくらいは許してくれるようです。
・授業をさぼった場合、行けるのは校舎内のみとなります。
授業は校舎を出て、正門から東門にかけての桜並木の下で行われるようです。
ぽかぽかと暖かい日差しの中、猫たちも日向ぼっこに来ているようです。
美和先生は適当に見回っているようです。
春に毎年行っている恒例の授業らしいので、去年の様子などを聞くことも出来そうです。
それでは、皆様とまたお会い出来ることを願って。