８０００文字探偵｜リアクション

８０００文字探偵

■名探偵、マリエッタ・ラシュリエ！
「難儀しているようね」
　扉を開き、現われる美女。
「その声は……！」
　一斉に振り返った師呉たちは一斉に叫んだ。
「「アライグマアライ・キリンキリング先輩！」」
「マリエッタよ」
　ゆっくりと家庭科室に入ってくるマリエッタ。
「この事件、確かにマンボウくんは犯人じゃないわ。彼は自分が犯人だと思わされている……そう、私の直感が告げているのよ」
　マリエッタは、お皿にのったほかほかのハンバーグにフォークを突き立てて言った。
「この事件、私が必ず解いてみせるわ！」

　マリエッタによる必死の捜索が始まった。
　学内を駆け回り、聞き込みを続け、混雑する購買から焼きそばパンを獲得し、パック牛乳をくわえ、バスケで汗を流し、シャワーを浴び、共に青春を追いかけた部員たちと肩を組んでねこーひー牛乳を一気飲みする。
　そんな彼女がついにロッカーから見つけた交換日記に、その名前はあった。
「これは……」
　ぱたんと日記を閉じ、マリエッタは明後日の方角をにらんだ。
「やはり、そういうことだったのね」

「くっ、一体どういうことなんだ」
「誰が真犯人なんでしょう」
「サキリが血まみれのナイフでジャグリングしているが全くヒントにならない」
「点と点がつながりすぎてついにドラゴンの造形をとりはじめたわ」
「お困りのようね」
「その声は――」
　どこかから聞こえた声に、全員が一斉に振り返った。
「全日本ごま塩より分け親方！」
「マリエッタよ」
　ふぁさぁっと前髪をかき上げるマリエッタ。
　彼女は一冊の交換日記を翳すと、ニヒルな雰囲気をかもしながら言った。
「この事件の真犯人を、ようやく見つけることが出来たわ」

　全員が集まるなか、マリエッタは交換日記を開いた。
「多くの謎に包まれたこの事件。けれどそれらは一本の糸でつながっていたのよ。真犯人と被害者。その二つを結ぶたった一本のね」
「その糸とは……」
「これよ」
　交換日記。片方はサンマ先輩……そしてもう一方には『黒ちゃん』と書かれていた。
「被害者であるサンマ先輩。そして真犯人である黒……えっと、くろ……さき？　せんせいよ！」
「そんな、黒部先生が！？」
「うそだ、黒沢先生がサンマ先輩を殺すはずない！」
「おちついて、黒崎先生を疑いたくない気持ちは分かる。けれど……」
　マリエッタはストンと紙芝居セットを取り出した。

「黒川先生は誰もが名前をぱっと思い出せない不人気教師（※個人の感想です）。だからこそグッズ販売までされるサンマ先輩に嫉妬を抱いていたの」
　テレビに映るサンマ先輩を前にハンカチを噛む黒なんとか先生の絵が現われた。ぱらぱらと話にあわせてめくられていく紙芝居。
「嫉妬に狂い、そのストレスを埋めるために暴飲（プロテイン牛乳を一気飲みする黒なんとか先生）、暴食（ささみ肉をどんぶりいっぱい食べる黒なんとか先生）、暴走（はちまきを巻いてマラソンを走る黒なんとか先生）、暴眠（ナイトキャップをかぶってぐっすり眠る黒なんとか先生）……」
「健康的だなあ」
「いいランナーに育ちそうだ」
「そんなある日、家庭科室で踊っていたサンマ先輩を見てかるーく殺意」
「かるいなあ」
「そしてかるーく包丁で刺した後かるーくマンボウくんに罪をなすりつけたのよ」

「お待ちになって！　そんなのでたらめよ！」
　突然出てきてキャラを完全に間違えている黒なんとか先生（金髪縦ロールのウィッグを装着しております）が身を乗り出した。
「大体かるーくってなによ！　具体的にどうやってなすりつけたのよ！」
「かるーくは……」
　閉じていた目をカッと開き、マリエッタは言い切った。
「かるーくよ！」

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