８０００文字探偵｜リアクション

８０００文字探偵

■真犯人、サキリ・デイジーカッター！
　指をさされたのは、端のほうでお茶を飲んでいたサキリだった。
「フフ、見事よ。その通り……僕が事件の真犯人だ」
　すっくと立ち上がるサキリ。
　彼は美しいイセキリヴォイスでシリアスに語り始めた。
「サンマさんとマンボウくんはある日口論をしていたんだ。確かマニャカニャのマニャとカニャの見分け方についてだったと思う」
「ちっさ」
「それがエスカレートし、マンボウくんは彼に殺意をもった」
「ちっさ！」
「その夜、コーラに寄った勢いでマンボウくんは隣の席に座った僕にこう依頼したんだ。『しゃんましゃんなんてしんじゃえーい』」
「そこ正確に再現しなくても……」
「だから彼は、サンマさんを殺したのかと聞かれたときに肯定したんだ。自分が依頼したのだから、殺したようなものだってね」
　フッと笑うサキリ。
　無駄に揺らすワイングラス。
　無駄に撫でる黒猫。
「僕は事件解決のために呼ばれた探偵としてこの現場に潜り込み、事件の捜査を妨害した。そして口封じのためにマンボウくんも殺した」
　天井から下りたひもをきゅっとひくと、窓の外に白目むいたマンボウくんがぶらーんとつるされていた。
「マンボオオオオオオオオ！」
「だけど、探偵ごっこもおしまいかな。刑事さん、僕を捕まえることなんてできないよ。なぜなら僕はこの場から消え――」
「工藤クロスチョーップ！」
「はぐっ！？」
　窓を突き破って突っ込んできた工藤来夢が、サキリにクロスチョップを叩き込んだ。
　ずしゃーっと地面をすべっていくサキリ。
　一方来夢は床に着地すると、全員をキッとにらんだ。
「あんたちこれでいいの！？　今ここで終わったら、残り七割強がすべて寝子島ぶらり途中下車になるわよ！」
「い、いや、だって真犯人は」
「そこは『せやかて工藤』って言うところでしょーが！」
「はぐっ！？」
　立ち上がるサキリに工藤ローリングチョップをくらわせる来夢。
「な、なぜ、声優すらちがうのに」
「けれど安心しなさい。この私が来たからにはもう安心よ」
「だめだこの人聞いてない」
「このリアクション、漫画家探偵工藤来夢がページ一杯もたせてやるわ！」

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