謎の少年は、雨と共に……？｜リアクション

謎の少年は、雨と共に……？

結：少年は、雨に濡れてやってくる

　――校庭

「……おかしな事になってきたな」
　外で見張ってみよう、と考え外に出ていた修達は、ねこったーの書き込みを見て表情を険しくした。

　――赤西殿をボコった相手と遭遇。なるだけ喧嘩を回避したい。

　ねこったーの書き込みに、月詠とあおいが顔を見合わせる。現場はアップされた写真から体育館裏あたりのようだ。
「人数が相手より多かったら、向こうも手が出しづらくなるかもしれない」
「それに、『謎の少年』が現れるかもしれないよ。……どうする？」
　月詠が冷静に判断し、翡翠はあおいに問う。と、あおいはすぐに頷いた。
「ちょっと怖いけど、やっぱり、会ってお礼が言いたい。行きましょう！」

　同時刻。千唐と真央もまたその書き込みを見て体育館裏辺りへ向かおうとしていた。外に出た所で、ボクシング部部室にいた綾花達５人と遭遇する。
「これはもしかしたら、もしかして会えるチャンスじゃね？」
　博美の言葉に、真央も「だったらいいのだ」と気合十分。しかしねこったーに書き込まれた「なるだけ喧嘩を避けたい」の文字に千唐は僅かな冷たさを覚える。
（最近の喧嘩は、ねこったー等で応援を頼む奴も多いからな……）
　喧嘩を避けたい、のは本音だろう。しかし、相手の人数が気になった。
「喜ばしくない状態ね。……ちょっと見過ごせないわ」
「ともかく、行ってみないと。……この発信者とか、心配だ」
　千歳の言葉に楚良が頷くと円も力強く傘を握り締めた。
（本当にピンチそうだし……助けてくれるかな、巧せんせー）
「行くとしても、怪我をしないようにしましょう」
綾花の言葉に、全員頷いて歩き始めた。

　刀は雨の中物探しをする巧を追跡中であったが、ふとねこったーで見た情報に目を見張る。
（……なんだか騒動がでかくなってるな）
　妙な胸騒ぎを覚えていると、体育館裏の方から声が聞こえる。それが聞こえたのか、巧もまた足を止めた。
「なんかえらいことになってそうやな。生徒同士の揉め事には、首突っ込まん方がええとは思うんやけど……場合によっちゃ諌め役も必要やろ」
　雨が少し小降りになった事で、刀にはその声がはっきりと聞こえた。そして、はっきりとこう言った。
「御剣君、悪いんやけどこれ、頼むわ」
「えっ？！」
　バレていたのも驚きだが、何かを託された事にもちょっと驚いた。物陰から出て確かめると、どう見てもビニール傘。そして、巧はというと雨の中声の方へと走っていた。
「先生！　それって……」
　刀も傘を拾って追いかける。その途中、また雨が激しくなり……同時に、見慣れた先生の姿が、僅かに霞んだ気がした。
「あら、追跡中だったかしら？」
　ふと声をかけてきたのは、『謎の少年』と思わしき相手を追いかけていた蛇那伊だった。刀が事情を説明すると、彼はうふ、と笑って頷いた。
「そう……。手合わせしたいと思っていたけれど、まずは追いかけましょ？　御免ね、呼び止めて」
　刀は気にするな、と首を振り、２人で追いかけ始めた。

――校庭・体育館裏辺り

　――昨今の喧嘩は『ねこったあ』や『すまほ』で人を集める作戦らしいのじゃ。たいまんでは分が悪いらしいからの。じゃから対するこちらは、人員を削る作戦を取る事が大切なのじゃ――

　いいなが小声で解説し、天野と赫乃がなるほど、頷く。巴は震える赫乃を背中で庇いながら、結月、龍八と共に中居達を牽制していた。
「中居先輩、何か知らねぇけど、もう終わった事じゃねえか？　今更やることなんて」
「こっちにはあるんだよ、赤西。そのガキを出せ、あの男を呼び出す！」
　拳児の言葉に、中居と呼ばれだ男は乱暴に手を出し、結月を指差した。龍八は目を細め、内心で愚痴る。
（分が悪すぎる。人数としては同じぐらいだが、喧嘩できない奴もいるし、何より相手がな……）
　ちらり、といいなを見る。僅かに彼女も顔色が優れないように思うのは、曇空の所為だけではないだろう。龍八より背の高い男子生徒達に、些か警戒を覚える。
「この我慢の出来なさは情けねーなぁ……。けどよ、テメーの好奇心の為に人が困ってんの放っとくのはやっぱ男じゃねーよ」
　不二夫がぐっ、と手を握り締める。彼の言葉に、五分刈りの男子生徒がぎっ、とガンつけてくる。
「赤西とそっちの女を痛めつければアイツが来るだろう、そこを袋叩き……という訳か」
「マジで嫌な連中だな。　ていうか、考える事が単純じゃね？」
　龍八の推理と不二夫の言葉に不良達が殺気立つ。それに更に身を竦ませる赫乃。巴は二人を僅かに睨む。

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謎の少年は、雨と共に……？

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