謎の少年は、雨と共に……？｜リアクション

謎の少年は、雨と共に……？

前奏：雨だれに耳を傾けて……。

　――旧市街商店街・茶屋『紗之香』

（少し、雨足が強くなりましたか……）
　軒先の掃除を終えた看板娘の紗乃恭玲珂は、小さくため息をつく。梅雨には早すぎるというのに、雨は朝から止むことなく降り続いている。こうなると、客足も少なくてさみしいものだ。
　学校から帰り、身支度を整えて店に出てみたは良いものの、まだ片手で足りる人数しか訪れていない。少し暇だな、と思いながら雨音に耳を傾けていると……玲珂はある事を思い出す。
（そういえば、雨の日に現れる男の子がいる、という話がありましたね）
　学校で聞いた噂を思い出し、探しに行こうかな、とか話す同級生の会話が耳に蘇る。けれども、店番のある彼女は探しに行くことができない。それに、幼い頃に視力を失った彼女にとって、強風や雨で苦労する事が多い。
「不思議ですね。突然現れて、去っていくなんて……」
　幽霊ではあるまいし、と小さく苦笑していると、雨音の合間に足音が聞こえてくる。それで我に返った玲珂は、いつものようにしとやかに接客をするのだった。

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