梅雨が近づきつつある寝子高で、こんな噂が流れている。
『雨が降ると、寝子高の周辺に現れる奴がいる。
そいつは寝子高生を何かしらの形で助けてくれるらしい』
所詮噂だろう。多くの者がそう言ったのだが、先日遭遇した、という者が出て来た。
「ああ、俺は確かに助けられたんだ。……そいつにな」
赤西 拳児はいつもより真面目に、静かに言った。彼はどこか遠い目で思い出しながら、その時の事を語る。
「その日、俺は色々あって、体育館裏で3年生と喧嘩したんだ。しかも相手は3人でさ……マジでボコボコにされたんだ」
そして、もうだめだ、と思ったその時に……一人、ふらりと現れたという。濡れた制服姿で拳児の前に立ちふさがり、彼はぽつり、こう言ったそうだ。
――最近の奴は、サシでの喧嘩もしきれんのかい。
少し小柄で、一見、1年生のように見えた。相手は拳児より体格のいい者ばかりである。やめろ、と拳児が叫ぶのを無視し、その少年はくいくい、と人差し指で相手を挑発した。自分より年下のはずなのに、妙に場馴れしている気がし、拳児は面食らう。
「勿論、相手は挑発に乗った。けれどもその攻撃を全て鮮やかにかわして……。そいつ自身は全く攻撃しなかったけれど、何もしないでビビらせやがったんだ」
逃げていった3年生を見送ると、少年は拳児を立たせ、無言で立ち去ったそうだ。
「俺はそいつを探してるんだ。どうしてもお礼がいいたくてさ」
拳児はそういうと小さく頷いた。
「うん、学校の門の所であったよ」
ツインテールを揺らし、
七夜 あおいはそう言った。彼女は僅かに考え、少しずつ話し始める。
「その日はね、ちょっと寝不足気味で頭痛がしていたの。一日中眠くて。それで、ぼ~っとしたまま歩いてたら、急に腕を引っ張られたの」
驚いて振り帰ろうとしたその刹那、目の前を通っていく黒い車。それで、誰かが自分を助けてくれたのだ、と気付いた。
助けてくれたのは、見覚えがあるような少年で、自分と年がさほど変わらないように思えたそうだ。
少年はあおいに怪我がない事を確かめると、「気を付けないと危ない」と言って直ぐに立ち去ったと言う。その際、彼はハンカチを落としており、あおいはそれを渡したいと思っていた。
彼女に少年がどんな姿をしていたか覚えているか、と問うと、また考えながら答える。
「そう言えば、着ていたのはこの学校の制服じゃなかったよ。校章も真四角で違うモノだったし」
最初は偶然だと思ったが、2人とも、同じ事を口にする。
少年の左目の下に、小さなほくろがあった、と。
今日は朝から雨が降っており、放課後に入ってから、一段と激しくなったように思える。貴方は窓の外を見、少し考える。
――もしかしたら、今日はその少年が現れるかもしれない。
菊華です。
今回は雨の日に現れた謎の少年探しです。
赤西君と七夜さんの2人がその少年を探しています。
情報整理:謎の少年について
・喧嘩に場馴れしている?
・もしかしたらどこかでみたかもしれない?
・纏っている制服が寝子高の物ではない
・左目の下に小さなほくろがあった
サンプルアクションにて色々なアプローチを書いておりますので、参考にしていただけると嬉しい事です。
リアクションは放課後からスタートします。
何が起こるかは皆さんのアクションしだいです。
謎の少年の正体は誰なのか。それを是非解き明かしてみてください。