ラブ☆部活＆同好会～文化部の春～｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会～文化部の春～

●パソコン部：制作会議

　パソコン部の部室では、綴柚枝、風見鶏スグリ、そして部長の史越奈津樹 ――いちおう暫定としてではあるが、年長の柚枝が「器じゃないから」と辞退しているので、部長と呼んでも良さそうだ――が今後の活動について話し合っていた。
「自作ゲームつくろーぜ！！！！！」
　と柚枝が張り切っているように、すでにパソコン部としての主な活動はゲーム制作に決定している。スグリと奈津樹の頭にも同じような考えがあったため、ここまでの流れはスムーズであった。やはり男の子たるもの、『ゲームを作ってみたい』という野心を抱くものである。
「問題は、どうやって作るかだよなー。オレはそこまで知識ないし」
「すぐりん。今はプログラミングの知識がなくたって、簡単に作れるツールがあるんだよ」
　柚枝が人差し指をぴっと立てて、すぐりんことスグリに言った。そしてパソコンのブラウザから、さまざまなゲームエンジンを検索していく。モニタに映し出される検索結果に、三人はそれぞれ目を走らせていた。
「ＲＰＧとかもできるけど、やっぱり一番作りやすいのはノベルゲーかなぁ」
「おっ、いっすね～！　ノベルゲー☆」
「もちろんシナリオは自分たちで作る必要あるけどさ。システム的に超シンプルだし」
　柚枝が検索したゲームエンジンの中から、ノベルゲーム制作用のツールを絞り込んでいった。　
「ノベルゲーでしたら……」奈津樹がモニターを指差しながら言う。「これなんか、どうでしょう？」
　奈津樹が指定したのは、プロも使っている代表的なツールであった。使いやすさには定評があるし、なによりフリーウェアである。
「お、いい感じじゃ～ん☆　使いやすそうだし、それにしよう！」
　スグリが身を乗り出して賛成する。柚枝にも異論はない。
　これで、制作環境は整った。
　あとはノベルゲー制作にあたって必要な、文章、イラスト、音楽をどうするかである。
「あ、俺は音楽素材なら提供できる！」
　柚枝がびしっと立ち上がって言った。そのハイテンションなキャラそのままに、ペストマスクをかぶって楽器演奏の動画をネットに上げている柚枝は、その腕前も確かなもので音楽に対する造詣は深い。最近では、音声合成ソフトを使った作曲もこなしている。
「音楽は柚枝先輩にまかせましょう。柚枝先輩の作った音楽、聴くのが楽しみです」
　奈津樹がにこやかに微笑んだ。
「ん～、オレは何やろっかなー」スグリが首を傾げながら言った。「奈津樹クンはどーするの？」
「俺はもともと家で美少女系の絵を描いてたから、キャラクターを描きたいな。表情差分とか作ってみたい」
「おっ、いいね！　オレも絵を描くのは好きだけど、キャラはあんまし」
「絵ってどういうの描くの？」
「地図とかが多いかなー。ってことで、オレは背景イラストを描いてみよっかな！」
「スグリは背景を描けるんだ！　俺はそっちは苦手だから逆に羨ましいかも」
「にひひ～ッ。適材適所ってやつだね～」
　スグリがにんまりと笑った。
　三人の中では年長でありながらも上下関係を気にしない、柚枝の存在もあってか、パソコン部はゆ～るく朗らかな雰囲気になっている。
「奈津樹クンがどんな絵を描くのか気になるし、柚枝センパイの音楽も早く聴いてみたいし。どっちも楽しみだなぁ☆」
「俺もすぐりんの背景すげー楽しみ！　……けど、肝心の文章がいないんだよなー」
　そうなのだ。今のところ、シナリオの担当がいないのである。
　三人はしばし頭を抱えた。
「……文芸部から、誰か引っ張ってくるって手もあるけど」
「あっ、それいっすね」
「ついでにミス研の力も借りてみよっか」
　三人は見つめ合ったまま小さく頷くと、さっそく部室を飛び出して、助っ人を探しに出かけた。

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