海神の島にて｜リアクション

海神の島にて

『砂糖、調理器具、保存用瓶』
『喫茶店を経営するに充分な食糧と調味料。米とか肉とか野菜とか塩や醤油とか』
『・ウミコーギー。なるべく沢山
・ウミコーギーが食べられる物リスト
・ウミコーギーが好きな物』
『オーブン粘土、オーブン、ヘラや絵の具など……あと、ウミコーギーとしゃべるワカメ』
『星が入るビン』

　旅行者の望むものがつらつらと並んだ紙を、人魚は岩場に頬杖をついて眺め、透かして、逆さにして、裏返す。そうして気が済んだと見るや、今度は指笛を吹いた。その音に、ウミコーギーたちがわらわらと集まってくる。

「海神様、どうしました」
「きょうはきれいな人魚さんなんですね」

　海の波のように、空の雲のように、何か定まった形を持たないのか、海神はくるくると姿を変える。全ては海神の気分次第。時に星の巡り次第。必要に応じて姿を変える。ウミコーギーはくぅうんと鳴いていた。海神はその反応を見て、無言で紙を突き出した。ウミコーギーは書かれている字面を上から下まで、確り読むと、喜びのあまり身体をぐるぐるとねじり、踊るように泳ぐ。

「ぼくらを呼んでる人がいる」
「うれしいなあ」
「だろうだろう」

　だから、と海神は自らの近くにいたウミコーギーを数匹抱えて、問答無用で木箱に入れた。

「ぎゅうぎゅう」
「せまい」
「海神様、ちょっとひどいです」
「箱にいれずに、おふねの甲板に出しておけばいいじゃないですか」
「なるほど！」

　海神はぱちんと指を鳴らして、哄笑を響かせる。
　果たしてウミコーギーは、無事島に着くことが出来るのだろうか――！？