海神の島にて｜リアクション

海神の島にて

『まだ勉強中の身での作品のため、拙いところもあるかとおもいますが。素晴らしい時間を過ごさせていただいたお礼です。海神様、コーギーさん皆さんにどうぞ』
「……だって。お礼にお礼返されちゃった」

　島に残された数々のお礼のメッセージと、丁寧に作られた甲斐斗の作品が一つ一つ、大切に泡で包まれて保護される。全ての旅行者がそれぞれの家に帰り、誰も居ないこの島には、ウミコーギーと喋るワカメを除いてはただ砂と岩と崖があるだけだ。船の留まったあの桟橋や、小屋や、旅行者を楽しませた木々の鬱蒼とした森、泉、河、滝……その全ては一夜の夢のように消えてしまっている。

「寝子島のひとみんないいひとだったなあ」
「やさしいひとがいっぱいでした」
「そうよねえ」

　砂浜に残ったウミコーギーたちは口々に旅行者の事を思って吠える。くぅーん、わうわう。鳴く声が収まってきたところで、天から声が響いた。男とも女ともつかぬ、不思議な声だ。

「よし、みんな帰ろう！」
「かえろうかえろう」
「ぼくらもかえろう」

　ウミコーギーは皆海へ向かってぞろぞろと歩き出した。短い足がちゃぷちゃぷと海水を弾く。

「今度はこっちから遊びにいこうかなっ！」
「海神様」
「ひとにみられてもだいじょうぶな姿でたのみます」
「気をつけなさいよぉ」

　天のちょっと弾んだ声に、ウミコーギーの唸り声。ワカメのどこか怪訝な声。そしてどこからか響く哄笑。それを合図に、島が海水に浸食されて、すべてが水底に沈んでいく。泡で守られたもの以外、じゃぶじゃぶと波に押し流され、砕かれていく。
　荒波の静まったそのあとには、ただ海が広がっていた。太陽は燦々と照って、澄んだ海の青を輝かせている。その底では、旅行者からもらった品を大事そうに背負って、ウミコーギーの群れがどこかを目指して泳いでいた――。

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