【星幽塔】そしてまた『日常』へ｜リアクション

【星幽塔】そしてまた『日常』へ

【第一階層(11)】小さいおっさん

　深縹露草は、ふと気がつくと第一階層の城下町に来ていた。
「おや、ここは……お城デースか？」
　そういえば、ちゃんとボウガンもいつのまにか装備できている。
「なのに、どうして服装はいつものままなんデスかねぇ……」
　ボウガン＋私服＋割烹着という自分の姿を見て、露草はふぅと溜息を吐く。
　ふと気づくと、物珍しそうに自分を見つめる人が大勢いて、露草はひとまずその場から逃げ出すことにしる。
　その道中、

「おい、聞いたか？　フラン様の部屋にアレが出たらしいぞ」
「本当か……！　フラン様の私室に入り込むなんて、アレのくせに生意気だ……！」

「……？」
　露草は、妙な噂をそれとなく耳にしたのだった。

　＊　＊　＊

　露草はサジタリオ城を目指し、フランチェスカの補佐役だというジルベルトという男から話を聞いた。
「……ちっさいおっさん、デースか？」
　思わず間抜けな声を上げる露草に、ジルベルトは「ええ」と沈痛な声を上げた。
「フランチェスカ様は、部屋で勝手に物が動くだとか、着替えを覗かれていると仰るのですが……」
「それは大問題ではないデースか？　では、私が協力しマース！」
　露草は、自身のろっこん、『我が紋章は、光り輝く道標』の能力を説明し、協力を申し出た。
「なるほど。ですが、今の状態では、そのお力を上手く使って頂くことは難しいかもしれません」
「え？」
　露草は目を瞬かせた。
「今のままではちっさいおっさんが光っても見えないかもしれない」
「……え？」
「というのも、フランチェスカ様のお部屋は、有り体に言って、汚部屋なのです」
「……！？」

　＊　＊　＊

「……私の部屋を掃除ですか？」

　露草とジルベルトの突然（？）の申し出に、フランチェスカは目を瞬かせた。
「ええ。もちろん異性である私には見られたくないものもあるでしょうから、女性の侍従の方にも手伝っていただきマース」
　露草がジルベルトに目で確認すると、ジルベルトはこくりと頷き、すぐそばに控えさせていたメイド服の女性達を一歩前に出させた。
「ですが、仮にも塔を救った英雄でもある貴方達にそのようなことをさせるわけには……」
　フランチェスカは羞恥半分、申し訳なさ半分といった様子でふるふると頭を振るう。
　が、そこで露草は食い下がった。ここでなんとかしなければ、この補佐役のジルベルトが心労で死にそうに見えたからかもしれない。
「気にすることはありまセーン。フランチェスカさんを覗く輩がいるとなれば、ジルベルトさんや街の方々も心中穏やかではないでしょうし、またゴンザレスのような、よからぬものがあなたを狙っているわけではないとも限らないわけデースから」
　そこまで言えば、フランチェスカも従うしかなかった。
「では、どうかよろしくお願いします」
　こうして、フランチェスカの許可を得て、露草はちっさいおっさん探しに乗り出すことになる。

　＊　＊　＊