HAPPY BIRTHDAY TO WORLD｜リアクション

HAPPY BIRTHDAY TO WORLD

■ちからあるほし
　惑星マシロ。白真白の見守るその星には、恐ろしいエネルギーが渦巻いていました。
　星をめぐるエネルギーは木々を生い茂らせ、水を豊かにし、空気を澄んだものにしました。
　しかしそれは植物にとってあまりに都合良く、逆にその他の生物にとってはきわめて過酷なものでした。
　微生物は大気に触れただけで死に絶え、殆どの物体はすぐに腐食し、どんなすみかをもっていても毒性の強い植物に浸食されてしまいます。
　なぜこんな星になったのか、数億年を遡って観察してみましょう。

「普通の星じゃつまらないよね。過酷な星で、それでもたくましく生き延びる生命があればいいな」
　真白は荒れ狂う星の大気圏外から、赤くうずまく星の色を眺めていた。
　地核は常に荒れ、有毒なガスを吹き上げながら揺れを頻繁におこした。
　それに伴って海は荒れ、たびたび陸地を舐め尽くしていく。
　それゆえ原始生物の上陸は早かったが、絶滅もまた早かった。
　幾度も進出と絶滅を繰り返し、残ったのは強く根を張る植物のみ。
　それに追いつくようにして、植物と共生する生物が陸上進出をはたすようになった。
　この星には植物の成長を爆発的に促す成分が多く流れていた。
　それは時として海中に解け、雨に混じり、風に乗って広まった。
　海底はおろか、陸上も大量の巨大植物に覆われ、日光と大気栄養によってすくすくと育ってゆく。
　植物どうしの生存競争は苛烈を極め、いびつに進化した植物たちがあふれる栄養分を元手に他の生物たちを餌にする環境が定着した。
　食虫植物は当たり前。ツタを大量にからめて栄養源となる生物を保管する植物や、生物に寄生して奴隷化する植物も大量に生まれた。
　時にはそんな植物のケアをしつつ、自らはその傘下に入ることで外敵から身を守る共生関係が生まれることもあった。
　ゆえに、この星で生き延びる知的生命体とはすなわち、死なない技術に特化した生物であった。

　多くの生命が植物に支配されていたこの星で、たくましく生き延びる生命がありました。
　ぴんとたった耳は音や温度、微細な電波やエネルギー風をキャッチするアンテナとなり、屈強な足は植物の捕獲を逃れる脚力となる。その生物は知恵をつけ、植物を利用して生き延びるすべを獲得していました。
　ある植物に対しては安全圏を見つけて自己防衛に利用し、ある植物に対しては素材の堅さを利用して自らの衣服や住居を組み立てました。
　植物に対する知識はすなわち星への知識でした。彼らはその知識を蓄積し、伝承し、高度化し続けることで生き延びていきました。
　それゆえ彼らに定住の地などありませんでしたが、この過酷な星で長く生き延びた数少ない生命となりました。
　そんな彼らに大きな変化が訪れるのは、これからずっと先。
　いくつもの星が宇宙開発に乗り出した頃。
　つまり、外来星生物との接触でした。