HAPPY BIRTHDAY TO WORLD｜リアクション

HAPPY BIRTHDAY TO WORLD

■かえるさんのほし
　惑星ミト。
　星を見守るかみさま、一原みとにあやかったその星は、いまだ幼い星でした。
　青い海と広い大地。そして大きな大きな三つの月。
　海は膨大な満ち引きを繰り返し、大陸を覆う日もあれば大きく引く日もありました。
　そんな星にも生命は生まれ、生存競争を重ね、ある種が生き残りました。
　丸い身体に尾びれをはやしたそれを、オタマと呼びます。
　オタマは生存競争を勝ち抜き、やがて大地へと進出するのでした。

　惑星ミトではじめて大地を踏んだ生物は、手足をもった生物でした。
　泳ぐ力とは別にはねる力をもち、海の中でも陸の上でも生きていくことができます。
　そんなカエルさんが大陸を支配するのは、そう遅くはなかったでしょう。
　やがて大陸の半分以上をカエルさんが支配するに至った頃、寒さをしのぐために火をつけることを覚えました。
　どのカエルさんが最初だったのかはわかりません。けれど彼らは次々に火の使い方を覚え、火に集まるようになり、家畜を飼い、作物を植え、皆が住める家を作り、それらは集落となり、部族となりました。

「ん……ううん……」
　うっすらと覚醒する。
　広がる星々の風景に、みとは思わず目を開いた。
「ここは？　そっか……新しい星、つくってたんだっけ」
　胸に抱いたカエルさんのぬいぐるみをそのままに、みとはゆっくりと反転した。
　ベッドの上で寝返りをうつのとはわけがちがう。
　なぜなら彼女がいるのは、宇宙空間なのだから。

　神様のいる星は、祝福された星でした。
　あちこちで様々な生物が生まれ、生存競争を続けるなかで、カエルさんは知恵という機能を発達させてみるみるその数を増やしていきました。
　寒いところに順応するために獣の毛皮を着込み、熱いところに順応するために水辺を開拓しました。
　道具を作る必要性を得てから、カエルさんは手先が器用になりました。
　泳ぐのに必要な機能を残して、指先を巧みに動かせるようになったのです。
　加えて、元々もっていた舌を伸ばす能力がとても便利になりました。
　舌が発達し、ものを持ち上げたり強く押したりできるようになりました。
　発達したカエルさんたちは時折動物を恐れることもありましたが、大地のあちこちに根を張り、順応し、どんな動物よりも広く豊かに繁栄しました。
　豊かさは余裕を生み、ミト星でこびとを家族にすることが増えました。
　こびとは『カエルさんと仲良くすること』によって繁栄した動物です。
　じきに彼らは、空に浮かぶ星々に憧れました。
　海にも山にも行けた彼らですから、次は輝く星に舌を伸ばしたくなったのです。

　宇宙ロケットが星の大気をやぶり、星々の海へと旅立ちます。
　神様はそれを見送って、満足げに目を閉じました。

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