NEKOJIMA GET BACK　ユメユメ事変・後編｜リアクション

NEKOJIMA GET BACK　ユメユメ事変・後編

■ユメユメ事変・チャーリー：寝子島中学・校庭
　地を割り現われる無数の物体。
　ゲームカセットやチョコバーが寄り集まったいびつな人形たちは、棍棒や手斧を握って一点へと駆け寄った。
　その一点とは。
「こんなモン！」
　振り込まれた棍棒を左右にかわし、死角から打ち込まれた斧を特殊なグローブで受け止める玖珂新。
　強烈な握力によって斧のブレードを破壊すると、相手の腹めがけてねじり上げるようなパンチを打ち込んだ。
　回転しながら吹き飛び、砂地を滑っていく人形。
　巻き上がる砂埃。
　空気ごと切り裂いて現われたのは、丸太を握った魚塚源三だった。
「がっはっは！　片っ端からぶっ飛ばすぜ！」
　丸太の端を握ってぐるりと回る。それだけで周囲の人形たちは薙ぎ払われていく。
「源三（ゲン）、おまえメチャクチャだな……丸太をその辺の棒きれみてーに振り回しやがって」
「それがよ、思ったより重くねえんだ。どうしてだろうな」
　言われてみれば。軽々振り回せる丸太や斧を正面から受け止められるグローブなんて、現実的に考えておかしいのだが……。
　新はピッと指を立てて、源三の顎につきつけた。
「そりゃお前が鍛えてるからだろ。人間鍛えれば丸太くらい振り回せるようになんだよ」
「なるほど！　さっすがアニキ、頭もキレるぜ！」
　ホントは授けられた道具が特別なのだが、そこは深く考えない二人である。
　考えるべきが他にある、とも言える。
　校舎の窓を割って粘土細工の人形がいくつも飛び出してくる。
　源三と新はそれぞれ身構えた。
「アニキ、競争しましょうや。買った方にジュースおごりでどうです」
「あんだと」
　撃破数で勝負をするなら、丸太をぶん回す源三の方が圧倒的に有利なのだが。
「オーケー、勝負は五分五分だな！　やってやるぜ！」
　その計算ができない源三と、そもそも計算をしない新である。
　二人は人形の群れへと自ら飛び込んでいった。
「夢だ日常だと色々言われたが、イチイチ考えんのもめんどくせぇ！」
　素早く繰り出されるナイフ。
　それを真正面からのパンチでブレードごと粉砕すると、新は絶え間ないラッシュでたたきのめす。
　まわりを囲む人形たち。後方からのスイングをかがんでかわすと、肘を相手の腹に叩き込む。大股で移動して別の相手の手首をハンマーアタックでたたき落とし勢いをつけた回し蹴りで別の人形の頭を蹴飛ばし、そのままスピンしてまた別の人形の顎にアッパーカットを入れた。
　拳を突き上げる新と、ばたばたと倒れる人形たちの完成である。
「すげぇぜアニキ。こっちも負けてらんねえな！」
　源三は丸太の真ん中あたりを持つと、並んで突っ込んでくる人形たちめがけてダッシュ。
　このあとどうなるか想像がつくのか、人形たちは慌てた様子で武器をすて、向かってくる丸太を一斉に受け止めた。
　五人対一人。数で圧倒されているにもかかわらず、実際に圧倒されているのは人形の方だ。
　新との共闘や非現実的な戦闘状況に置かれた源三は脳が普段行なっているリミッターを解除。いわゆる火事場の馬鹿力状態となり、筋肉繊維や骨組織をずたずたに崩壊させながら無理矢理パワーを引き出していた。そこへ来て彼のろっこん能力である。敵からの攻撃をたびたび受けた彼は肉体が崩壊するそばから回復させ、永続的にリミッター解除状態を使い続けているのだ。
　……という理屈を抜きにして、『根性があれば何でも出来る』をモットーに踏ん張るのが源三である。
「ぬぅ……おらあああああ！」
　牛のごとく力んだ源三によってめりめり押されていく人形たち。
　ついには地面から足が離れ、建物の壁ぶつかる形でたたきつぶされた。
「次はどいつだ。かかってきやがれ！」

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