遊びにいこう！　絶滅動物園｜リアクション

遊びにいこう！　絶滅動物園

【いたずら者、ロキール登場！（１）】

　さて。
　皆さんがそんなふうにして絶滅動物園を楽しんでいるその裏で、園内ではのっぴきならないトラブルが起こっておりました。
「こらあああ！！　待ちなさあああいっ！！」
「ひひっ。やーだよ！　このロキールさまが、ドンくさい人間なんぞにつかまるもんかい！　ひひひひひっ！」
　ぴょーい！　緑色の肌をした小さな人影が、ガイドのお姉さんの手をすり抜けて逃げ出しました。
　お姉さんは知るよしもないことながら、ロキールと名乗った彼は、ほしびとでした。見た目にはファンタジー映画やゲームにでも出てきそうな、ゴブリンのような姿をしています。赤いトンガリ帽子をかぶり、革のベストと短パンを身に着け、腰には小さなナイフとピッキングツール。まるで盗賊のような出で立ちです。
　彼はひょいっとジャンプして、ピッキングツールを大きな檻の扉の鍵につっこみ、かちゃかちゃかちゃんと弄って開けてしまいました。
「そーら、出てきな！　そんなに狭いところで縮こまってるこたあない。お前さんはもっと広い世界で自分の力を試すべきなのさ、ひひひっ」
　ぎぎぎぎぎ。檻が開いて、中に閉じ込められていた大きな大きなシルエットが、のそりと姿を現します。
　大きな頭をもたげて、ずらりと牙の並ぶ口をがばっと開き、ぎゃおおおおんっ！！
　そう、ティラノサウルスです！　しかもこのティラノくんは頭のてっぺんにでっかくバッテン傷がついていて、目つきもぎらぎらしていて凶暴そうです。
「あーっ！　その子は暴れん坊すぎてほかの動物たちを襲っちゃうから、しつけができるまで隔離してたのに……！」
「おーやそうかい、そいつは好都合！　わしはこいつの胸がすく大暴れを高みで見物して、楽しませてもらうとするぜ。ひーっひひひひひ！」
　ほしびとロキールは、ほかのいくつかの動物たちの檻も同じように開けると、サイの一種であるエラスモテリウムの背中に飛び乗り、ずどどどどっと逃げていってしまいました。
　その後を追いかけるように、バッテン傷のティラノサウルスもぎゃおんと鳴いて、山すそのほうへと走り出します。おまけに檻に入っていたディノニクスにダイアウルフ、テラトルニスコンドルまでもが、ぴゅーっと逃げ出してしまいました。
「ま、まずーいっ！　このままじゃ、お客さまが捕食されてしまうわっ！？」
　そんなことになったら、大参事です。絶滅動物園はきっと閉園に追い込まれてしまい、動物たちだって居場所を失ってしまうことでしょう……大ピンチです！
「……待ちたまえーーーっ」
　ばばばーん！　そこへ現れる、ありがたくも唐突な救いの手がありました。
「あ、あなたたちは招待客の……？」
「神魂かな？　神魂だよねこれ。神魂ならトラブルがつきものだよね。うんうん分かってる。というわけでスタンバってた、私だ」
　なんかヒーロー戦隊みたいなカッコイイポーズでご登場。クールな旅鴉月詠！！
「え、そのポーズ私もやるの？　まぁいっか。トラブルなら私にお任せよ！　ばっちり解決しちゃうんだからっ」
　危険と見れば首を突っ込む、お騒がせ中学生。今日も元気な新田樹！！
「ああいう人いますよねー。みんなが楽しんでるところにいらない騒動を起こす人。ああいう人は、アレですよね。アレしないとですねー」
　動物イジメるやつァゆるさねえ！　生命を弄ぶ不埒者には正義の鉄槌を、屋敷野梢！！
「はじめてのどうぶつえんだし、ゆっくり見て回ろうとおもってたのに～っ。悪いことする人は、ゆるさないんだから！」
　ほしびとさんだって怒ってます。ナチュラルボーンキツネっ娘、リプカ・ングルマ！！
「というわけで、我々がトラブルに対処しようじゃないか」
「ガイドさんは園内が正常に回るように、いつもどおりにお願いしますねー？」
　もはやベテランもれいびたる月詠と梢が、そんなふうになんとも頼りがいのあることを言ってくれるもので、ガイドのお姉さんはすがるようにこくこくとうなずいたのでした。
「わ、わかりました。園内は私たちスタッフにお任せください。皆さんは、てっちゃんをお願いします……！」
「「「「てっちゃん？」」」」
　ティラノくんの名前だそーです。

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