ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　小難しい顔で本条小萩が正門を通り抜ける。華道部に立ち寄って明日の大まかな打ち合わせは終わっていた。
　絵が得意な小萩は宣伝用のチラシに一頁の漫画を描くことになった。華道に関する内容を予定している。
　頭の中ではシャープな黒い線が自在に走る。斬新なコマ割りを次々と編み出していく。
「ぬー、時間がないですね」
　桜花寮が左手に見えてきた。青い瞳に気力が満ちる。小萩は大きな胸を誇るように姿勢を正した。
　――こういうちょっぴりピンチな時にこそ、真価が問われるのです。奥ゆかしい小萩の天稟の才が溢れ出てしまうのです。
　後漢書にある、疾風に勁草を知る、というヤツです。ぬー、こればかりは隠しようがないのです。
　にやにやと笑いながら桜花寮へと入っていった。

　誰もが寝静まる頃、小萩の活動が本格的に始まる。ライトに照らされた机上には紙の束と漫画に必要な道具が並べられていた。
　――頭の中で構図は決まりました。あとは設計図に従って描き出していけばいいのです。
　白い紙に直接、黒い線が引かれる。下書きは不要であった。頭の中の設計図に基づいてＧペンを走らせた。
　――さすがは小萩なのです。若い時分から才気がダダ漏れです。これはあれです。
　栴檀は双葉より芳し、というヤツなのです。
　小鼻が膨らみ、やや鼻息が荒くなる。早々に人物を描き出す。同時に吹き出しに台詞を書き込んでいく。
　その内容は易しく、初心者の理解に寄り添うものであった。合わせて着色も始める。
　出来上がった一文を小萩は黙読した。
　――華道部は、きれいに楽しくお花を活けましょうという部活です。
　一瞬、目が潤んだ。両目に掌を軽く押し当てた。
「……天才の煌めきを秘めた文章に感動しました」
　息を吐いて口を一文字に結ぶ。コツンと自身の頭を小突いてチラシを仕上げていった。
　――完成したチラシは早朝に学校に持ち込んで印刷です。
　描く手は休むことを知らず、徐々に加速していった。