ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　高杉かようは正面を向いて早足で歩く。目を一点に定めて目的の場所に辿り着いた。ユニフォームを着た野球部員が第二グラウンドに揃っていた。
　かようは勢いよくグラウンドに入る。被っていた帽子を取って頭を下げた。
「入部希望です。よろしくお願いします」
　近くにいた一人が振り向いた。かようよりも背があった。体格も一回り大きい。鋭い目を向けてきた。
「一年か」
「はい、体育科一年の高杉かようです」
「ポジションはどこだ？　まさか、未経験じゃねえだろうな」
　若干、威圧感が増した。かようは胸を張って答える。
「中学とリトルでピッチャーをしていました。右投げです」
「ちょっと投げてみろ。おい、道具を持ってこい。それと誰かキャッチャーをやってやれ」
　返事を待たずに用意が進められた。かようは制服を脱いだ。半袖シャツとなって投手用のグローブを受け取った。手に嵌めて感触を確かめる。
「用意できたらマウンドに行け。不満はないよな」
「はい、見ていただけるなら喜んで投げさせていただきます」
「俺はバッター役をやってやる」
　右のバッターボックスに立った。バットを持たないまま、打つ構えを取る。
　かようの顔色が変わった。
　――見えないバットでもあるのか？　凄いプレッシャーを感じるぜ。
　マウンドの一部を入念に蹴った。足場を固めたあと、姿勢を正す。
「好きなところに投げてみな」
「わかりました」
　グローブを胸元に据えた。左足を一歩下げて身体を捩じるようにして渾身の一球を投げた。球はホームの内側を削るようにしてキャッチャーミットに収まった。
「良い球を投げるじゃねえか。合格だ」
「一球だけでいいのですか？」
「十分だ。球速は悪くない。何より、逃げない一球に見所があるぜ」
「ありがとうございました。これから、よろしくお願いします！」
　かようは希望した野球部の入部が認められた。緊張した顔で第二グラウンドを去り、間もなくして表情が緩んだ。
　ゆっくりと歩きながら軽く息を吐いた。
　――ヘンな汗が出たぜ。でも、これで俺も高校球児だ。甲子園を目指して頑張るか。
　それにしても色んな部活動があるもんだよなー。
　視界は一気に広がり、勧誘の声も耳に入るようになった。
　――着ぐるみは演劇なのか？　あれも着ぐるみだが、探検部なのか。大道芸人みたいなのもいるけど、何の勧誘なんだろう。
　慌ただしく見ているところでアハユルに出会った。同じように周囲を気にして歩いていた。
　かようは笑顔で駆け寄った。
「アハユルも見て回ってたんだな」
「そう、見たけどナッシング。ここにはフラダンス部はないんだね」
「そうか。ちくわ部とか意味わかんねーもんはあるのにな」
　かようは努めて明るく返す。ミミは少し笑って後頭部を向けた。ポニーテールを軽く摘まんで振って見せる。
「ララナ、サーフィン部の部長さんに海に誘われた。バトルじゃなくてパドルレースするらしいよ。かようも一緒にどうかな」
「そうだな。俺の用事も終わったし、いいぜ。一緒に行こう」
　二人は回り道を楽しみながら指定された寝子ヶ浜海岸へと向かった。