ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　錦織彩は待ち合わせの教室に向かう。大きな眼鏡の奥の目は少し潤んでいた。何かに怯えたような表情で横目をやる。
「どうかした？」
　ツインテールを弾ませた七夜あおいが青い瞳で聞いてきた。
「…あ、いえ。今日は…ありがとうございます。快く引き受けてくださって…感謝しています…」
「どうしてよ。私だって家庭科同好会の会員なんだから、がんばって会を盛り上げていきたいと思っているわよ」
「…はい、そうですね…頼りにしています…あの…足は疲れていませんか…こちらの都合で歩かせてしまって…」
「そんなに歩いてないよ。彩ちゃんはヘンに心配性なんだから」
　あおいは白い歯を見せて笑う。彩は三つ編みの髪を頻りに弄りながら猫背となった。
　二人は待ち合わせの場所に着いた。すでに会員は集まっていて思い思いのところに座っていた。
　綾辻綾花は立ち上がった。
「あおいちゃん、ここが空いています」
「じゃあ、そこに座るね」
　あおいは綾花の横に落ち着いた。
「…遅くなりました…私は皆さんがよく見える、ここにします…」
　全員が見渡せる位置に彩はちょこんと座る。
「んー、家庭科同好会でも勧誘はするんですが」
　大塚絽紗はふわりと立ち上がる。彩の横に座って顔を寄せてきた。
「一体、どうしたらいいものかしら。ねぇー、彩さん？」
「あ、あの…顔が近いです…息が掛かって…もう少し離れて、その、いただけませんか…」
「あらー、全く気づきませんでした。悪気はありません。目が悪いものですから、ごめんなさいねー」
　絽紗は緩く巻いた自身の髪を撫でながら微笑む。その間に息を整えた彩が心配げな顔で呟いた。
「…慣れない人にも、気軽に…楽しんで貰うには…どうしたら…いいのでしょうか」
「こちらが決めた物を参加者に作って貰ったら？」
　あおいの提案に同意するかのように綾花はにっこりと笑う。
　絽紗は名案とばかりに手を合わせた。
「手芸で何かを作るっていいですよね。初心者が多いと思いますから、簡単な物にしましょうか」
「…そうですね。では、どのような物を作りますか…」
　意見を募るように彩は会員の顔を見ていく。綾花は控え目に手を挙げた。
「はい、どうぞ…」
「私はピンクッショとコースターが良いと思います。どちらも作り方は簡単ですし、実用性もあるので参加者に喜ばれるのではないでしょうか」
「…そうですね。私からは…ヨーヨーキルトを…その、手間は無くて、見た目も可愛らしいので…」
　彩は少し俯き加減で言った。横にいた絽紗がゆったりとした動作で口を開く。
「紅茶や焼き菓子を振る舞って、リラックスした状態で進めるのもいいかもしれないですね」
「…よそ見して…ケガをされても困りますので…全てが終わったあとにします…他は生地の調達…見本も必要です…」
「彩さん、余り物のフェルトでしたら、寮にありますので持ってきますよー。他は買い出しになるでしょうか」
「大塚さん、助かります…会で保管している材料も…使います…」
「見本に合わせて過去の作品を展示してもいいですか」
　綾花の質問に彩は微かな笑みを浮かべた。話は進んで活動の記録を収めた写真も飾ることになった。個々の展示物には用途が書かれたカードを添える。
「イラストで説明したい活動もあります。ディスプレイを含めて私に任せてくれませんか」
「…はい、よろしくお願いします」
　彩は一礼して立ち上がった。会員達も続いて行動を開始した。
　綾花は隣にいたあおいに目を向ける。
「あおいちゃん、手伝って貰ってもいい？」
「もちろんよ。力仕事は任せてね」
　あおいは腕を曲げて見せる。力瘤は出ていなかったが頼もしい笑顔に綾花も釣られて笑った。

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