ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　校内を後木真央が走っていた。その姿が尋常ではない。見た者は一様に驚く。
　真新しい制服を着た男子が叫んだ。
「ストリーキングだ！」
　真央は即座に反応した。滑りながら止まる。
「ストリークィーンと呼んで欲しいのだ！　でも、真央ちゃんは裸ではないのだ！　これはフンドシ普及同盟の正装なのだ！」
　胸には白晒を巻いていた。下は白褌で前に垂らした布が風にそよいでいる。
　男子は疑わしい目を向けていた。
「……あー、はい。これも、何かの勧誘なんですよね？」
「そうなのだ！　この腕章が目に入らぬかーなのだ」
　右胸を突き出した。斜めに掛けられた紐の途中に『新聞部』と書かれた腕章が取り付けてあった。
「それが新聞ですか？」
　男子は真央の左腰に束ねられた物を指差した。
「その通りなのだ。ここにも書いてあるのだ」
　真央は背中に手を回した。白褌に差し込んでいた手旗を男子の前でバスガイドのように振って見せる。
『カムヒア新聞部！　一緒にＮＭＲを探そう！』
「ＮＭＲって？」
「寝子島ミステリーレポートのことなのだ。この島には不思議がいっぱいなのだ。新聞のネタの宝庫なのだ。詳しい内容は新聞に書かれているのだ。がおー接客よろしくなのだ～♪」
「え、縫い包みじゃない！？」
　真央の頭頂に座っていたふくよかな三毛猫がのっそりと立ち上がる。するすると身体を伝って下りると新聞の一部を咥える。差し出された形となり、男子は遠慮がちに受け取った。
　男子は早速、新聞を読み始めた。
「本格的ですね」
「正式な新聞なのだ。寝子高には新聞部が二つあるのだ。真央ちゃんのいる方が表になるのだ。なかなかに忙しいのだ。毎月、校内新聞を発行しているのだ。学校行事やアルバム用の写真を撮りまくりで合宿とかもあるのだ。掛け持ちもオッケーだから、いつでも部室にどうぞー状態なのだ！」
　一気に捲し立てる。男子はわくわくした様子で記事を読んでいた。
「丁寧な説明、ありがとうございました。他の部も回って考えたいと思います」
「よろしくなのだ～♪」
　真央は走り出す。目にした生徒に笑顔の勧誘を続けた。
「そこのキミも、そこのアナタも、新聞部で一緒にＮＭＲを探しませんか～なのだ！」
　がおーは咥えた新聞を顔だけの動きで生徒達の胸に投げ込んだ。その愛らしい仕草に女子から黄色い声援が送られた。
「がおーのおかげで好感度がウナギ踊りなのだ！」
「鰻上りじゃなかったっけ？」
　首を傾げる女子に真央は親指を立てて見せた。
「そうとも言うのだ！　こんな感じの二年の後木真央をよろしくなのだ！　白褌に興味がある者も歓迎するのだ。寝子島フンドシアイランド化計画に加わって夏をエンジョイするのだ♪」
「それはちょっと」
　後退りした女子が隙を衝いて駆け出した。真央が追い掛ける。がおーは新聞配りに精を出した。
　行く先々で悲鳴と歓声を巻き起こし、真央は奮闘するのだった。