春野菜収穫！｜リアクション

春野菜収穫！

　マイペース芸術家である高校生、旅鴉月詠は買い物帰りにたまたま畑の前を通り掛かりました。
　助けを呼ぶ声に気づいて、慌てるでもなく。
「またか。やはりこのへん神魂の降りやすい要因があるんじゃないかね」
　かつて月詠は、ここでキャベツに触手が生える事件に遭遇していたのです。
「助けてと言われても私非力だしなー捕まりたくないし。準備するから数分待てー」
　と、安全距離で悠長にスケッチブックを開き、何やら絵を描き始めました。

　そこへ中学二年生の新田樹がやってきました。
　三度のご飯よりスリルが好きなお転婆少女です。
「触手に人が捕まってぶら下がってる！？　あれは……野菜？！」
　寝子島は時々物騒な事が起きるので、いつでも対応できるようにサバイバルナイフなどを持ち歩いている樹。
　樹は楽しそうにナイフを取り出し走りだします。
「けしからん野菜だな～、成敗してやる！」
　そう言いつつ、璃亜やアルレッテが捕まっている様子を見て、
（美男美女が触手に絡まれてる……ナイスだ野菜！）
　などと内心思っている樹でありました。
　触手が届かない程度の距離まで近づくと、
　シュッ！
　捕まっている人を避けてナイフを投げ、触手を狙います。
（仮に切断できなくても、野菜が痛みで捕まってる人を手放すかも）
　シュルルル……ナイフの刺さった一本の触手がのたうち、璃亜から離れます。
　しかし他にも触手が絡んでいるので、璃亜は逃げ出すことができません。
「それなら！」
　樹は、ろっこん『箱庭（リトルガーデン）』を発動。
　対象物を決めて念じると、５０ｍ以内の指定場所に瞬間移動させることができます。
　投げたナイフは樹の元に戻ってくるのでした。
　これを繰り返し、連続攻撃！　
「どうだ！」
　何度もナイフを刺された触手は、ついに璃亜を手放しました。
「きゃあっ！」
　真っ逆さまに落ちていく璃亜。
　その下へ、アケーチが身を躍らせました。
「ふふ……間に合いました」
　土煙を上げながらしっかりと璃亜をキャッチ！　したものの。
　……その下半身は、再び触手に巻きつかれていました。
　璃亜を地面に降ろすと、身代わりのようにアケーチは触手に引きずられ。
　地面に引きずり込まれそうになりながらうっとりしています。
「ああ、傍に置いてくれると言うのですか？　愛されてる気分です……」　

　見回りも兼ねたランニングをしていた御剣刀は、畑のほうが何やら騒がしいのに気づきました。
「何事？　あれは畑さんの……」
　蠢く触手を見て、刀はデジャビュを感じました。
「また触手かよ！　今回はキャベツじゃなくてじゃがいもと玉ねぎなのか。折角の収穫を邪魔されるのは困るだろうし手伝おう」
　耕作老人はとうとう触手に捕まった孫のそふとを助けようと、クワを杖代わりに立ちあがろうとしています。
「そふと、今助けに行くぞ……いたたた」
　その様子に刀は耕作の元に駆け寄り、声をかけます。
「おじいさん、腰を痛めてるんじゃないのか？　休んでいてください、手助けしよう」
「おお、すまんのう。頼んだぞ」
　刀を拝む耕作老人。
（この野菜たちは神魂の影響でデカくなって触手が生えただけだろうし、神魂抜けたら普通に食べられるよな？）
　刀は頭の中で撃鉄を落としてろっこんを発動、【加速】しました。
「玉ねぎとじゃがいもを収穫したら解決か？」
　そのまま触手を払いのけて近づいて、触手の根元を掴んで引っこ抜こうとします。
「くそっ、抜けない！」
　しかし一人で引っ張ったくらいでは、触手はびくともしません。