春野菜収穫！｜リアクション

春野菜収穫！

　真っ先に触手につかまり感触を喜んでいたアケーチでしたが、璃亜が捕まったのを見て、真剣に戦うことを決意しました。
「やはり人様に危害を加えるのを放っておいてはなりませんね」
　触手に恍惚とした表情で顔を寄せたアケーチは。
　がぶり。
　噛みつき、ひるんだ触手から蛇のようにすり抜けました。
「あなたの触手と私の触手、どちらが粘り強いか勝負です、ふふ……！」
　ピシリッ！
　いつのまにかアケーチの手には黒い鞭が握られていました。
　
　寝子中三年の仙藤蒼は、隣のクラスのそふとからの応援要請の連絡を見て飛んできました。
「去年も似た様な事があったと聞いてたから、おおよその察しがついたけど、案の定ね」
（それにしても触手とか……エロゲじゃないんだから。まさかベタな展開？）
　そんな目に合うのはごめんだ、らっ倫に抵触しちゃうじゃないの……と、蒼の頭に謎の言葉が浮かびましたがそれはおいておいて。
「鎌やナタとかある？」
　そふとに尋ねると、
「あ、ああ」
　鎌とナタとを持ってきてくれましたが、気づかぬうちに、そふとの背後にはもう一本の触手が迫っていました。
「うわあっ？！」
　蒼にナタを渡した途端、巨大玉ねぎの触手に捕らわれそうになりました。
「ひゃあっ～！」
　ザクッ！
　蒼はすかさず鎌で触手に切りかかります。
　ビシッ！
「ふふ……！　させませんよ」
　さらに機敏な動きでアケーチの鞭が華麗に飛びます。
　しかし、触手はアケーチに反撃してきました。
　シュルッ！
「はぁっ、この攻撃、たまりません……！」
　やっぱり攻撃を喰らうと悦んでしまうアケーチでした。
「うわあっ！？」　
　その隙に、そふととそふとが落とした鎌は、触手に掴み取られてしまいました。
　ですが蒼はひるみません。
「ナイフ縛りに比べたら、ナタが使えるだけまだマシよね！」
　やりこみ型のゲーマーの蒼、『ニャイオハザード』をナイフ縛りでクリアするような気分ですが、それはそれで何だか燃えてきます。
　ナイフ縛りとは、拳銃など他の武器を用いずにナイフだけを武器として使用する縛りプレイの一種で、リーチが短いためかなり難易度が高いのです。
　が、当然、ナイフ縛りで全シリーズをクリアしている蒼なのでした。
（玉ねぎの触手をうかつに切ると、玉ねぎの細胞が破壊され、涙が出る成分が気化して大変なことになるわ）
　なので蒼は、できる限り切れ味の鋭い刃物で触手を切ることで細胞の破壊を抑えようと考えたのです。
　そのため基本戦術は一撃離脱に徹することにしました。
「でも触手ばかり切ってもらちが明かないわね。機会があれば本体に致命的な一撃を加えないと」　
（触手の動きをよく観察して……）
「そこっ！」
　隙をついてナタの一撃を加えようとした蒼ですが。
「きゃっ！？」
　反対側から、触手が蒼の胸元に飛んできました。
「いやっ！」
　すんでのところで避け捕まえられずに済みましたが、攻撃でＴシャツの胸元が破り取られ、慌てて蒼は胸を押さえます。
「あ、あの、これ……」
　吊るされたままのそふとが、空いていた手で首にかけていたタオルを投げてくれました。
「ありがとう」
　青はタオルを胸に巻きつけ、改めてナタを手に玉ねぎに向かいます。
「よくもやってくれたわね！」　

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