５０００兆円貰った！｜リアクション

５０００兆円貰った！

◆突発ゲーム大会開催！
「うっそー！？」

　シーサイドタウンの道路脇、そこに停まっていたリムジンの中から少年の叫び声が響いた。

「５０００兆円！？　マジで！？」
「ええ！　どうぞご確認ください！」

　水守流は目の前に用意された札束に喉を鳴らす。アタッシュケースにみっしりと並んだその一つを手に取り、ぱらぱらと捲った。紙質も万札そのもので、透かして見ても傾けても本物とわかる。よくあるジョークグッズの類ではない。偽札でも、ないだろう。おそらく。

「……ほ、ほんものだ」

　最初は迷惑メールにありがちな詐欺かと疑ったが、こうして実物を見せられては疑うのもどこか憚れるような気がして、流は札束をアタッシュケースへ戻した。黒服はにこりと笑って、アタッシュケースと通帳を流に手渡した。

「良い一日を！」

　そんなこんなで道へ降ろされた流はどこかへ去っていくリムジンを見送りながら考える。
　いきなり手に入れた５０００兆円。これだけあれば何でも欲しいものが買え、やりたいことがやれる故に、却って悩む。何にしようかな？　悩み悩み歩いていると、ふと名案を思い付く。

「……よし！」

　暫し時が経って、考えをまとめた流は早速行動へ移った。

　休日昼間の繁華街、その片隅。
　貸切にされたゲーセンは老若男女様々なゲーマーが集まって活気に満ちている。その中心で、流は周りを見回して言う。

「へへ、今日は無礼講だ！」

　流の言葉を聞いたゲーマーたちから喚声が上がる。

「あ、ちゃんとマナーよく、順番はまもるようにな！」

　もう一度喚声が上がった。さらに流が右腕を上げ、ある筐体の前に立ったことで会場に緊張走る。

「まずはストリートニャンコＶで勝負だ！　腕に自信があるやつぁかかってきやがれー！」

　これを開会の言葉とし、ここに突発ゲーム大会が始まった！
　早速男性のベテランゲーマーが流の前に立ちはだかる。コンマ秒も乱れぬ入力から放たれる、流れるようなコンボ技。
　流もそれで負けるような腕前ではないが、相手の力量は凄まじく苦戦を強いられる。しかし辛くも勝利！　その隣ではリズムゲームで競い合う男女が忙しなく両手を動かしている。

　そうして何戦か戦い、ストリートニャンコＶでの勝負もやりつくした流は、会場のゲーマーたちとリズムゲーム、レースゲーム、シューティングで腕を競い合う。
　さらにはUFOキャッチャーまでも勝負の場と化し、沸き返る会場。集まった人々は皆楽しそうで、流も高揚感に包まれる。

　解散の時が近づいても名残惜しそうにボタンを叩くもの多く、ゲームセンターの中は祭りのあとのような雰囲気だ。
　日常に帰るまで、もうちょっとここに居たい。そんな気持ちに誰もがなった。
　それでも時は過ぎていき、一人また一人と後ろ髪を引かれる思いでゲームセンターを出る。

「ふひー、遊んだ遊んだ」

　その夜。楽しかった思い出を振り返りながら、流は５０００兆円の残りを眺めた。

「さーて、明日はこの金で何しようかなー？」