５０００兆円貰った！｜リアクション

５０００兆円貰った！

◆５０００兆円よ、永遠に！
「全部なくなんの？」
「我々としてもこのような措置は大変心苦しいのですが、どうも上からお叱りがございまして、ええ、ええ――」

　今日一日で買ったものと残額は無くなってしまうと、そう告げた黒服に小野田万里の顔は一瞬で蒼白となる。

「あれ……あたしがバイトやめたのは……？　元の家は……？」
「そ……それは……」

　言葉に詰まった黒服の後ろから、より体格逞しい黒服が胡散臭い笑顔で万里の前に出た。

「そちらは問題ありません。元の世界に残っていますよ。ですが……より良い職場を紹介しますが、如何なさいますか」

　どうする、小野田万里。

…※…

「あれっ！？　素敵漫画達は！？」

　夢のような１日を終えて、翌朝。本居陽毬は手元にあったはずの漫画がないことに気付いた。
　ルームメイトは首を傾げて、そんなのあったっけ？　と言い出す。陽毬は慌てて冷蔵庫の中を見て、その喪失にショックを受けた。

「朝食前のスイーツとおやつは！？」

　何度も確認するが、ないものはない。陽毬はああー……と呻いて、項垂れた。

「こんなことなら1日でもっと豪遊するんだった！」

…※…

「はっ！？　俺の５０００兆円がねぇ！？」

　５０００兆円の喪失は誰に対しても、平等に訪れる。
　水守流も翌朝、５０００兆円の喪失に驚き、夢か現か、あの１日の記憶すら疑った。

「……まあ、楽しい夢だったからいいか」

　しかし、夢だったとしても良い夢だ。
　そう流は結論付けて、昨日のことを追想した。未だ鮮やかな記憶に高揚感が蘇る。

「またいつかゲーム大会開いてみたいもんだぜ」

…※…

「強引すぎましたね」
「怪しまれてしまいましたね。本当に申し訳ないことをしました」
　停められたリムジンの中。黒服の持つタブレットには５０００兆円を貰った者たちの反応がモニタリングされていた。それを確認しては表に打ち込んで、反省点を言い合う黒服たち。とてもむさい。
　しかしそれも体格の良い黒服の目配せで静まった。
　そして体格の良い黒服は手を叩き、運転主の肩を叩く。出発の合図のようだ。リムジンは人気のない道路へ滑り込み――飛んだ！
　木々の陰に隠れ、宙を駆けるリムジンは、やがてバチバチと稲妻に包まれて消える。

　謎の黒服集団。目的は、標的の幸福。
　もしかしたら、次は貴方の所に現れるかも？

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