５０００兆円貰った！｜リアクション

５０００兆円貰った！

◆５０００兆円で、なにしよう？
　５０００兆円。
　謎の黒服集団から渡された、余りに非現実的、というか非実在的ともいえる莫大な金額に、羽生碧南は最初、困惑するばかりだった。
　しかし、あるものはある。暫く持っていれば実感も湧いてきて、あれをしようこれをしようと考えも回ってくる。

『家買ったよ！』

　それから碧南は、父方の実家にいる家族に向けて自撮りをパシャリ。豪邸と一緒の碧南の画像を添えてメールを送る。
　桜花寮に住んでいたはずの、フツウの学生だった碧南が、星ヶ丘にプール付きの豪邸を買っているのだからきっと家族は驚くだろう。彼らの反応を想像して碧南は少しどや顔になる。
　焼失した実家の再建も考えはしたが、それよりも新しく星ヶ丘の豪邸を買った方がいいと思ってのこと。
　それでもまだお釣りがくるから、碧南はさらなる使い道を考えた。

　碧南は、乙女ゲームが好きだ。それでも女子高生の財力は有限で、欲しいと思っても仕方がなく我慢したものは山とある。
　そこで５０００兆円。
　碧南は最新の乙女ゲームをはじめ、今まで買えなかったあれやこれやのゲームやらグッズやらを大量に買った。さらに豪邸の一室を乙女ゲーム専用のプレイルームへと改築し、快適な環境を確保する。

　碧南はドキドキしながらディスクを挿入した。ゲームを起動すれば、大画面いっぱいにタイトル画面。
　セーブデータを読み込んで進めれば、ちょうど山場のシーンのようで、攻略対象のかっこいい顔と美麗なスチルがこれまた大画面いっぱいに映し出される。それと同時に、人気声優の甘い言葉も最高の音響で響いた。攻略対象にすぐ傍で囁かれているような気分になる。
　碧南はそれはそれは夢中になって乙女ゲームをプレイした。
　したが、やがてそれは大きな野望の種となる。

　碧南は、乙女ゲームが好きだ。だが、好きだからこそ思うこともある。
　何作かプレイしてみても理想ピッタリのゲームには中々巡り合えなくて、歯がゆい思いをすることもある。
　プレイにそろそろ疲れてきて、休憩にと部屋を出た碧南は、これだけやってもまだ残る５０００兆円の、その残りを見て頭に稲妻が落ちた。そう錯覚するくらいの衝撃が頭に走った。

「これだけお金があれば、私の理想の乙女ゲームが作れるわ！！」

　そこからの碧南は、もう早かった。
　手始めに、乙女ゲームを販売しているゲーム会社すべてを買収に動く！
　そして自分の理想の乙女ゲームを開発させるべく、スタッフやキャストは超一流どころをつけることを約束させる。そのために、５０００兆円の残りを湯水のごとくつぎ込むことは厭わない。

　そうして碧南自身が脚本を書くという段になり、乗る筆に任せてシナリオを紡げば、もう時計は眠る時間を示していた。

「ふぁ……」

　一つ欠伸して、続きは明日。碧南はパソコンを閉じた。

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