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「それで……俺だけ、なんでここにいるんだ？」
「あひゃはっ！　ゲートで戻る瞬間、鎖で引っ張ってー呼んじゃいましたぁ」
そこはツクヨの部屋。
そのベッドに二人は腰かけて隣同士に座っている状態だった。
御剣はこういう事に離れていない方で随分と落ち着かないのかそわそわしている。
「えと、あーその……ツクヨのおかげで、最後の最後で勝てたよ。あ、ありがとう！」
「どういたしましてぇ。さぁがんばった貴方にはご褒美が必要ですねぇ……」
するりと着物をはだけるとツクヨは御剣の身体にキスをする。やわらかな胸がむにんっと御剣に触れた。
そのままツクヨは彼の唇を奪う。
数秒して離れたツクヨは口をあけて舌をぺろりと出す。
「な、いきなり何を！？」
舌を伝ってまだ口内に残っていたピンク色の液体が彼女の胸にたれた。
「何って、ご褒美ですよォ？　あら、たれちゃいましたねぇ」
「それって、ゴブリンポーション……もってきてたのか！？」
「あひゃはっ！　味が気になりましてぇ。ああ、でも汚れちゃいましたねぇ……ふふっ、貴方が拭いてくれますかぁ？」
「あ、ああ……も、もちろん！」
顔を赤らめながら用意されていたタオルで彼女の胸のポーションを御剣は拭き取ろうとする。
羞恥心で頭が沸騰し、なぜもちろんと快諾してしまったのか考える意識はない。
「うぅん、あっ……んんぅっ……」
「ちょ、変な声あげないでくれ！　色々と俺もまずいって……まじで！」
ベッドに横たわり上半身を余すことなく晒しているツクヨをなるべく直視しないように努めながら御剣は拭いていった。
だが粘質の液体は伸ばされるばかりで拭きとることは一向に出来ない。
タオルで擦られぐにぐにとツクヨの豊満な我がままボディが形を変え、柔らかい感触を彼の手に伝えてきている。
（だぁぁぁ、どういう状況だよ、完全にベッドに押し倒して胸いじってるみたいじゃないか！　これは、色々と……まずい！！）
「落ちませんねぇ……じゃぁ、お風呂行ってきますねぇ？」
「ああ、ああ、もちろん！　行ってくれ、うん」
そういって送り出そうとした御剣だったが事態は彼の考えを遥かに超えた状況となっていた。
（なぜだ、なぜ俺は纏わりつかれている！？）
そう、彼はベッドの上で何も身につけていないツクヨに後ろから抱きつかれているのだった。
後ろから抱きついているツクヨは彼のお腹を両の手で撫でる。
むにっと我がままボディが主張をしているが彼は鋼の精神で耐える。
「ふふふふー、もっとツクヨを見てもいいんですよォ。頑張ったご褒美ですしぃー？」
ツクヨの手が次第に下へと下がっていく。
「う、あっ……見るわけにはッて！　ツクヨそこはだめだって！　ほんと、あっぁ！」
彼女の巧みな手つきが御剣の身体を振るわせた。
緩急のついた『マッサージ』という刺激に耐えられず、御剣は情けない声をあげ身体を痙攣させる。
「あひゃはっ！　元気がいいんですねぇ！　あのダストなら喜びそうな状態ですねぇ……かぷっ」
ダストのマネとばかりに首筋をちゅうちゅうされた御剣は盛大にピンクオーラを放ちそうになるがこれまた鋼の精神力で耐えた。
その後、しばらく色々と誘惑していたツクヨだが耐える御剣を突破できず、ついには寝てしまったのである。
だが、彼の戦いはここからであった。
（落ちつけ俺、落ちつけ。大丈夫……うん、大丈夫）
言い聞かせる御剣はツクヨから借りた毛布を使って床で寝ようとするが後ろ髪ひかれ、ちらっベッドの方を見てしまう。
するとそこには素っ裸で寝転がるツクヨがいる。猫の様に多少身体を丸め、横を向いて眠っている彼女はその豊かな胸を金色の髪で隠している。
少し動けばその豊かな双球は余すことなく零れ、その全てが露わとなるだろう。健全な男子には辛い所である。
だが、それ以上に危険なのは彼女の足であった。
今はしっかり閉じられているが、あれが開きでもしてしまったらそこはもう御剣には未知の領域。
（それを見てしまったら、恐らく抑えられないだろうな……さて寝よ――！？）
「う……んんぅ……」
寝苦しかったのかツクヨが身じろぎし、髪が多少ずれて形が露わとなってしまった。
つい見てしまった御剣は視線を下へと外すがそこでは足が今まさに開かれようとしており魅惑の園が目前といった状態であった。
御剣は必死に視線を外そうとするのだが男子の本能ゆえかなかなか身体が言うこと聞いてはくれない。
「ん、ぁ……ふ……」
「やばい！　俺は寝るぞ！」
まさにツクヨが足を開き、彼女の全てが露わとなったのだが……その瞬間、御剣はろっこんで加速し、床に転がって毛布を頭まで被ったのである。
彼はまたしても鋼の精神で誘惑に耐えきったのであった。
ツクヨはその様子を薄眼で見ており、毛布の塊となった御剣をみて小さく呟く。
「あひゃは、失敗ですかぁ……全部見せちゃっても……いいのに……ふふっ」
ちなみに夜中に目が覚めた御剣は無警戒で色々と露わとなっている眠るツクヨの我がままボディによる視界的な攻撃に晒されたが、持ち前の鋼の精神力で彼女を襲わずに耐えきったのは言うまでもない。
そして朝になり、御剣を送り出したツクヨは聞こえないぐらい小さな声で言うのだった。
「貴方になら……ツクヨの全部、あげても……あひゃはっ♪」
それぞれの結末を手に入れ、物語は一旦の終焉を迎える。
だがそれは新たな始まりとも言えた。
なぜなら――。


◆


――――崩れた塔の跡地にてゆらりと骨削は立ち上がる。
そこに黒い欠片が舞い降り、彼の頭に直接声を届けた。
『お前は条件を満たした……よって７２柱が一人、クロセルがお前に力を与えよう。異世界、マシナリアに限り……貴様の姿を変え、我が力を振るえ！！』
何も描かれていない空の紋章の部分に７２柱の悪魔『クロセル』の紋章が描き出された。
次の瞬間、骨削は全身を異形の悪魔へと変じさせた。それは刺々しい装甲のような皮膚で全身が覆われた緑色の瞳をした赤い悪魔。
腕を咆哮と共に振るえば解けない氷でできた蒼い長剣が顕現した。
近場にいた警備中のゴブリンを斬ると、ゴブリンは凍りつき、次第に腐れて解けて消えた。
「これはいいっ！　新たな怪異！！　これぞ全てをかき乱す力！！！　はっはっはっは！　う、ぐ！？」
急に苦しみ出すと、骨削は元の姿に戻ってしまった。
何度念じても、もう一度変化することはできない。
「どうやら……色々と試さないといけない様ですなぁ、くっくっく……ノイズ、あんたさんは随分と物騒な置き土産を置いていってくださった……活用するほかあるまいて」
ノイズが砕けて散った、黒い欠片。
７２柱の悪魔と名乗ったクロセル。
マシナリア中に飛び散った７２個の黒い欠片が一体どのような物語を動かすのか。
それはまだ誰も知らない。
一つだけ言えるのなら。
彼らの戦いは、いまだ終わらない……といったことだけである。