ねこじま無双・ティンクルスターズ！｜リアクション

ねこじま無双・ティンクルスターズ！

■エリア・アルファ１　二丁拳銃の女
　運動部の朝は早い。
　ただでさえ朝練で早く登校するというのに、運動量に見合うだけのカロリーを摂取すべく朝ご飯はがっつりゆっくり食べるし、朝支度も楽じゃあ無い。
　少女ともなれば乙女のお手入れにそれなりの時間がかかったりもするものだ。
　そんなアレコレのゆえあって、羽生碧南は毎晩早く寝る習慣をつけていた。
　そりゃあ、夜更かしして乙女ゲームの愉悦にどっぷりつかりたい気持ちがないわけじゃあないが、そこは引き際、ぐっとこらえて布団に入るのだ。
　最近はどうしても気になって寝付けないので、枕の下に購入特典で貰ったクリアファイルを挟んでイケメンたちと戯れる夢を見る努力も重ねていた。
　よっしゃこれで今日は超能力学園都市のイケメンにハードかつ多少強引にドタバタに巻き込まれつつ抱きかかえられたり腕を引かれたりするぞと意気込んでいた、わけだが。

「なんかちがう……」
　目を開けるとそこは古都。
　舗装された砂地を踏んで歩いてゆくも、誰一人として見当たらない。どころか、遠くの方から鬼の集団が殺意満点に駆け寄ってくるではないか。
　いきなり鬼とか言っちゃったが、他に形容しようのない、節分の前によくスーパーで見かけるアレが棍棒片手にやってくるのだ。
　どうしよう。思ってた夢とだいぶ違うが、好き放題殴られるのはたとえ夢でもゴメン被る。
　なにかないかと胸や腰のポケットを探ろうとすると、ベルトにホルスターが接続されているのに気がついた。そして見慣れない拳銃が二丁。
　それも機関拳銃ないしは短機関銃と呼ばれる、雑に言うとアニメキャラが片手でバーッて連射してるやつである。
　使わない手はないか。
　碧南は早速銃を両手に抜くと水平に構えて連射。
　波のように押し寄せる鬼立ちが前から順にもんどりうって倒れていく。
「よし、いける。ちょっと予定と違ったけど、多分この先にいるはずよね」
　碧南は心のダーリン（無愛想だけどチョット強引で時には命を賭けて自分をまもってくれる無口な暗殺者的なキャラ）が待っているはずだ。
　碧南は交差した銃を翼のように水平に広げ、雑兵の波を切り開きながら走り出した。世界のルールを理解するのは、もう少し先の話である。

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