双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―｜リアクション

双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―

転：冒険者達はあきらめない

「あの拘束具……、なかなか固てぇな」
　七峯亨が悔しそうに呟く。そんな彼を治癒しながら、恵御納夏朝が心配そうに問いかける。
「ケイファのＨＰ自体は結構削れてきていると思うけど……、七峯君は無茶していない？」
「あぁ。前線組で連携取れてるからな。ほどよい人数だし、まだ色々温存できる」
　夏朝の問いかけに亨はにっ、と明るい笑顔で答える。彼は治癒の礼を述べると再びろっこん『縮身』を使って小さくなった。
「今度は真央ちゃんに捕まるといいのだ。都ちゃん先輩が張り巡らせた鉄線使って立体機動なのだ！」
　後木真央が相棒の三毛猫、がおーを頭に載せたまま再び走り出す。その服の端には亨が。こうして捕まっていったほうが体力温存に繋がる。
　彼らの向かう先、ケイファの周辺では激戦が繰り広げられていた。
「いっくよー！」
　ケイファの後ろに回りこんだ白真白が、愛用の『ぷち☆めてお』を振るえば、それにあわせて桜庭円が指揮棒をリズミカルに振る。
「こっちもいるからね！」
　出現したのは、技巧人形の腕。『鋼の左腕』がロケットパンチを打ち込めば、ケイファはそれを軽い動きで避ける。だが、そこに現れたのは夜海霧楓。床が白く凍りついていたとしても、壁はマグマの明かりで赤く輝いている。その衣装のお陰か、死角を取るのによいようだ。
（どうでもいい事だが、俺の知っている姫さんは皆お転婆だな……）
　姫の定義が崩れそうだ、なんて内心で思いながらも黒兎都が張り巡らせた鉄線を利用しアクロバティックな攻撃を仕掛ける。丁度真央と同時攻撃となり、その隙に亨がケイファの体へ飛び移る。
「いやぁ、絶景かな、絶景かな。地に足がついていないのは楽でいいな」
　小さく縮んだ身体でケイファの表面を走り、拘束具付近で飛ぶ。瞬時に元の大きさに戻ると『アートオブハント』を起動し思いっきり鋼爪で攻撃する。
　だが、ケイファも負けては居ない。彼を巻き込まんと、己ごと炎の腕で包み込んでしまう。
（くっ、背中が……！　油断したっ！）
　咄嗟に離脱した亨だったが、背中を嘗めるように炎が踊る。ＢＳ『火傷』を負った彼へ、瞬時に治癒の光が降り注いだ。前線組と行動する治癒士、塔ヶ崎璃亜である。
　亨が礼を言えば、璃亜が「いえ、コレぐらいしかできませんから……」と申し訳なさそうに言う。だが、彼女達治癒士が居なければ戦士たちは無茶が出来ないのだ。
　真央が炎の腕を避けながら鉄線の上に戻れば、苦笑しながら水守流が治癒を施す。その視線の先、新田樹の気合の入った『殴打』の一撃で僅かに飛ばされたケイファが、新田亮の土魔法『砂嵐』に巻き込まれる。
「はんっ！　アタイたちの力はこんなもんじゃないよ！」
　と、樹はすぐさま『挑発』をかけて己にヘイトを集めれば、その隙に御剣刀と薄野九月が同時に攻撃をしていた。
「合わせろ」
「いっくよー！」
　刀の放つ斬撃が、九月の放つ青い軌道をうっすら残す『コメットキック』が、ケイファの身動きをとめる。そこを狙って屋敷野梢が強襲をかけた。ろっこんを使って蝶に変化しつつ様子を伺ったが、ケイファの様子と周りの状況を見て変化を解いたのだ。
（なるべくヒーラーに負担をかけないように立ち回りたいですね。何が起こるか未知数ですし）
　考察をめぐらせながらも梢は『胡蝶拳・序』を放つ。その巧みな連続攻撃に見て居た者も思わず唸る。
（それにしても……、安易に教えないという事は事の重大さを意味する。身を案じればこそ、弱者になど教えられないのだろう）
　八神修は手にした打刀を手に魔法陣を維持し、ケイファへ『聖者の交信』を試みる。そして、うっすらと見えた仕草に、内心で舌打ちした。
「くるぞ、『日照りの庭』が！」
　彼の声に一同身構える。戦場全体がまぶしい光に覆われ、その間にケイファは移動するのだ。
　だが、それにも負けず着ぐるみさん（旅鴉月詠）のリズミカルな演奏は続く。その力強い音色が、冒険者達を勇気付けてくれる。

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( '人')＜リズミカルにもりあがっていこう！

　着ぐるみさんは少しでもケイファを後衛に近づけさせまい、と土奏『スタンビート』で彼女の敏捷性を下げようとしていく。だが、そのケイファが現れたのは、着ぐるみさんの真後ろだった！　打ち込まれた炎に、思わずたたらを踏む。

　――その音色、とめてあげるわ。