カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～｜リアクション

カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～

■僕の僕による僕のための僕カフェ
「はーっはっはっは！　やあ、よくきたね！　花椿涼太郎カフェへ！」
　コラボカフェというものを経験したことはあるだろうか。
　アニメやゲームやアイドルとカフェがコラボレーションして一定期間行なうもので、小さなものでメニューから、大きなもので店内装飾に至るまでテーマに合わせた空間を楽しむことが出来る。
　よくアニメコラボのカフェでアニメキャラにちなんだノンアルコールカクテルやパンケーキなんかが出てくることがあって、気合いが入っていると壁に巨大なキャラクターのイラストが描かれ写メの的になるものだ。
　で、花椿涼太郎がやったのはその『大きなもの』の極地だった。
　コラボ先は勿論、自分自身である。
「みたまえ、この店内装飾！」
　薔薇園をイメージした店内にはいーい香りが漂い、ビューティーなラグジュアリーを堪能させた。
　むろんそれだけではない。
　壁、床、天井、そしてテーブルクロスに至るまで涼太郎の写真集がびっしりと飾られていた。
　ソファに寝そべりワイングラス（ブドウジュース）を揺らす涼太郎の絵画。
　天使の羽根を広げて雲へ飛ぶ涼太郎の天井画。
　涼太郎の顔が印刷されたタイル床。
　カウンター席には『涼太郎と向き合っている気分が味わえる等身大パネル』が一人分ずつ設置されていた。
「僕は知っているんだ。最高のカフェとは、最高に幸せなカフェだってことを」
　一輪のバラを手に、うっとりと目を瞑る涼太郎。
「そして最高の幸せとは、僕という存在を堪能することだということを！　さあ、カモン！」
　バラを空中へ放つと、パッと散った花びらが変じたかのごとく無数の涼太郎が現われた。
　カフェ店員風涼太郎。
　ファミレス風涼太郎。
　コック風涼太郎。
　ファーストフード店風涼太郎（有名なハンバーガー店ver、フライドチキン店ver）。
　その他もろもろ様々な涼太郎の分身が現われ、訪れた客へとマンツーマンでくっついた。
「メニューもパーフェクト・アンド・ビューティフルさ」
　そういって半分くらい涼太郎写真集でできたメニューブックを見せる。
　バラ飾りがのった涼太郎パフェ。
　薔薇の香りゆたかな涼太郎ティー。
　上半身裸の涼太郎が豆をひく涼太郎コーヒー。
　涼太郎オムライスを頼もうものなら、デザイン用ケチャップを持った涼太郎がやってきて『美しすぎる罪』とか書いてくれる。
　注文した人には涼太郎クリアファイル（３タイプから選べます）がプレゼントされる徹底ぶり。
　レジ前の購買棚には厳選の涼太郎グッズが並んでいて、お帰りの際にも幸せを持ち帰れるというしくみだ。
「美の天使、涼太郎カフェ……写真撮影はご自由にどうぞ☆」
　舞い散るバラの花びらとフラッシュに囲まれ、涼太郎は笑った。
　なんだか、突き抜けっぷりがとっても楽しめそうなカフェだった。