カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～｜リアクション

カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～

■ファンタジックカフェ
　旅鴉月詠は決めていた。
　カフェを作るなら海っぽいやつがいいと。
　それも、サーファーが通う沿岸のカフェみたいなあーゆーやつがいいと。
　だから白を基調とした壁紙やテーブルを並べ、入り口には流木で組んだオブジェと看板を作った。
　美しい貝殻が壁のメタルフェンス展示棚に並び、天井からは小瓶にはいった星の砂がいくつかぶら下がっていた。
　外から日が入るときには天井をきらきらと照らし、夜にオレンジの照明が下りれば星形のシルエットをおとすという仕組みである。
「うん。この調子でやってみようか」
　月詠は頷いて、早速スタッフとメニューのデザインに取りかかった。

　海っぽさを取り入れたなら、やっぱり魚介を使わないとはじまらない。
　明太子のパスタやイカのアヒージョ、イワシのマリネやハンバーグといった海浜レストランっぽいメニューをはじめ、ノンアルコールカクテルみたいなきらきらしたドリンクを揃えていった。
　さて、お客はどんなもんかと裏から店を覗いてみると、羽の生えた子や頭がネコミミはえた人なんかがちょこちょこと訪れていた。
　ほしびとさんとも付き合い始めた月詠である。今更ネコミミのひとつやふたつで驚かないが……。
　シーサイドカフェにサーファーじゃなく天使がやってきたことには、なんだかロマンを感じるものである。
「ゲームの世界ならでは、かな。じゃあ少し思い切ろうか」
　ここまでは学生が学園祭かその延長でできそうなレベル。
　しかしここから先はオトナの、それも沢山お金をぶっ込まないとできないレベルだ。
　まず月詠は広いスペースを一段上げて、半円形のステージを作ってやった。
　パーティー好きの連中なのか、すぐにウクレレを持った翼人が演奏をはじめ、人魚が歌い始めた。

　カフェは賑やかさを増し、昼も夜も無く騒ぐ社交の場になっていく。
　こうなってくるとお酒も欲しくなるのが人情というもの。
　上半身がサカナの人でもその辺は一緒らしく、『ホッケと焼酎でぐいっとやりたい』とか言い出す始末である。
　そして月詠は考えた。
　思えばここはゲームの中。お酒を出したら取り締まるみたいな規則はない。
　ついついアルコールを避けて選択していたが、もっと自由になってもよかったようだ。
「わかった。いくつか取りそろえてみよう」
　月詠が目をつけたのはワインだった。
　チーズや魚がよくあうような葡萄酒。
　しっとりと落ち着いたイングリッシュバーのような空気が、やがて夜の店内を支配するようになった。
　昼間は手を叩いて歌って踊った人たちも、夜はピアノやバイオリンの音楽に耳を傾け、ワインとチーズでゆったりすごす……そんな空間になっていった。
　シーサイドカフェは、今日もにぎやかだ。