カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～｜リアクション

カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～

■おいでよメンダコちゃんカフェ
　きみはメンダコを知っているか。
　あの画に描いたオバケみたいなシルエットをした深海の軟体動物である。
　海中でのフォルムはタコっていうかクラゲに近く、自ら上げると自重でぺったんこに潰れるというなんかかわいい生き物なのだ。
　ゆーても深海生物なので、これ専門に研究している人の本でも読まないことには詳しい生態まで語ることはできないのだが、それゆえにマニアックなファンもいたりして。
「メンダコ、良い……」
　多喜美律もまた、そんなメンダコファンの一人である。

　美律が目指したのはずばり『メンダコちゃんカフェ』である。
　家具を自由にデザインできるゲームシステムをフルに活用して、照明の笠やテーブルやソファや絨毯といったあらゆるものをメンダコ風にデザインし、ソファには大きい順にメンダコちゃんのカラフルなぬいぐるみを並べて置いていた。
　この時点で結構どうかしているが、加えて壁にはメンダコの写真や油絵なんかが飾られ、壁掛けディスプレイに深海で泳ぐメンダコの資料映像がヒーリングミュージックと共に流れていた。
「す、すごいカフェだ」
　客が度肝を抜かれるのも無理はない。
　メンダコとか知らない人も、なんならグロテスクだからって嫌っていた人も、うっかり好きになっちゃいそうなメンダコちゃんリスペクト空間である。
　そこへ現われるのは、メンダコをイメージしてふんわり広がったワンピースを着た美律である。
「いらっしゃーい。メニューも自信作よ、選んで選んで！」
　いつにましてテンション高めの美律がメニューを開いて見せたなら、写真つきのコンセプトメニューがずらりと並んでいた。
　メンダコソーダはカラフルなナタデココがメンダコ風に浮かび、深海をイメージした青いソーダに漂っている。
　他にもメンダコ型のゼリーや、プリン（透明なプラスチックカバーを外すと自重で潰れる）。
　ラテアートにはデフォルメされたメンダコちゃんが描かれた。
　お勧めは？　と聞いてみたならば。
「メンダコといえばパンケーキよ！」
　常識よね！　とばかりにメンダコちゃんが焼き印されたパンケーキが出された。
　メンダコがジャパニーズパンケーキデビルフィッシュと呼ばれているからなのだが、みんな知ってるよね？
「お客さん、メンダコちゃんにたっぷり癒やされていってね！」

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