カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～｜リアクション

カフェつくりゃんせ！　～世界にひとつだけの店～

■男なら、登って見せよう、エロの壁
　屑利執というオトコについて、語らねばなるまい。
　サイエンスの血を引きサイエンスの産湯につかりサイエンスのゆりかごに揺られてサイエンスを食って育ったサイエンスマン。
　そんな彼のモットーは『なければ自分で作る』である。いや、これは今考えたモットーなのでほんとにそうかは知らないが。
「俺はたびたび思っていた。自由なカフェデザインが売りの『カフェつくりゃんせ』には何かが足りないと」
　磨かれたタイルの床を歩き、人差し指をビッと立てる。
　振り返り、シャープかつダイナミックに指をさす。
「何だと思う！」
「え、な、なんでしょう……」
　何となくで呼び出された沼田さんがジャパニーズサラリーマンの代表みたいな顔をして額の汗をぬぐった。
　これが召喚モンスターで、固有の技が四つくらいスロットインされているとしたら、その一つには確実に『愛想笑い』が入っていそうな人だった。
「税率とか？」
「ちがーう！」
　両手を掲げ、ピンクな家具や薄暗いカーテンを次々に設置していく執。
　やがてできあがったのは、なんかカフェっていうかパブっていうかスナックっていうかクラブっていうかこう、なんか、なんていうの、子供が来ちゃダメなところだった。
「エロいお店だ！」
「エロいお店！？」
　沼田さんの眼鏡がたちまちに曇った。
　顔を片手で多い、クククと笑い始める執。
「男たちはみなエロを求める旅人。そして俺もまた、制服の露出度を少しでも上げようと工夫を重ね家具の配置を限界までそれっぽくした。しかし悲しいかなゲームはゲーム。いざ動かすと客は健全なひとばかり、スタッフも一向に……一向に……こう……こう、アレしてくれないんだ！」
　いっそこのタイミングで遊郭の基本システムについて説明してもいいが、なんか危ない世界に足を突っ込みそうなのでやめておこう。
「料理を頼むぞ沼田さん！　今こそ、ゲームの力で法に触れるレベルの店を作り出してみせる。いでよ、おねーちゃんたち！」
　執が指を鳴らすと、不自然なくらいプロポーションに優れた美女たちがグッとくる制服に身を包んで現われる。
「ファーストステップだ。まずは『ボタンのはじけるケーキセット』！　運ぶ最中に偶然胸のボタンが外れうっかり中身が見えてしまうというアレをもってこい！」
「オーダーはいりまーす！」
　美女がケーキを手にダッシュで現われ、なんと偶然にも胸のボタンが弾け飛――。

　執がジェットの勢いでゲームからはじき出されたのは言うまでもなかった。

このページにイラストを設定する