【お花見】しづ心なく花の散るらむ｜リアクション

【お花見】しづ心なく花の散るらむ

「タコ焼きおっきーい！」
　大きな口を開けて野々ののこはタコ焼きを頬張ってる。赤ちゃんの拳大はありそうなのを、紙皿から取るや丸々一口にしていた。
「ののちゃん、そんな急いで食べたら……」
　七夜あおいがたしなめるも間もなく、
「あぢっ！！　あっぢー！」
　さっそく口の中が暖炉みたいになったらしく、ののこはぴょんぴょんと跳ねまくる羽目になっていた。買ったばかりだから非常に熱かったのである。
「ほらこれ飲んで！　いいよあげるから！」
　あおいの手から冷たいウーロン茶を受け取ると、一気にこれを飲み干しののこは事なきを得たようだ。
「……いやー、買ったばかりのタコ焼きはファイヤーボールだね。気をつけよう」
「しばらく冷めるまで食べないほうがいいよー」
　そこに、
「ファイヤーボール？」
　と、声を聞きつけた天之川麗仁が顔を出した。
「お、麗仁くん。はとぽっぽ～♪」
「なに鳩ぽっぽ、って……麗仁くんもお花見？」
「そうだけど、僕はステージにも出るんだ」
「うわー、ホントホント？　そのギター弾くの？」
「うん。良かったら見に来てよ」
　麗仁は自分の出演時間を伝えた。
「じゃあ、私たちは屋台をもうしばらく回ってから行くよ♪　あおいちゃんにお茶返さなきゃだしね……」
「お茶なら別にいいよ？　でも、せっかくだし私もなにかもうちょっと買うかな」
「僕は、先にバックステージで打ち合わせもあるし、同じく出演者のこの人を送っていきたいから」
　麗仁が告げたとき、すぐ横に立っていた少女が、ちょこんと会釈した。
　またね、と別れる。
　連れだって歩きながら、ふと思い出したようにののこが言った。
「さっきの……麗仁くんといた子、美人だったね」
「でしょ？　私もそう思った！　すっごい肌キレーだったし！」
「あー、声かけてお友達になれば良かった～」
　読者諸氏はご存じのように、その少女とはシャロン･ナイトプレッジである。
　このときののこが何気なくつぶやいた言葉は、いずれ現実になる………………かも、しれない。

　椿美咲紀は取材続行中だ。
　いま彼女は、大舞台のバックステージでICレコーダーを回している。
「とっても良かったですよー。もう心がビリビリ震えちゃいましたー！　ところで、フィンレイさんは寝子高OBなんですよねー？」
　著名人フィンレイ･ランカスターが相手でも、臆さずミニカステラを手土産に、即席インタビューを敢行するのだ。
「ええ、芸術科でした。今日は久しぶりに、第二の故郷で舞台に上がることができて光栄です」
「今日のステージで、印象に残っている人、これから観るのが楽しみな人はいらっしゃいますか☆」
「そうですね。去年のネコフェスのライブDVDも見ましたから、樋口先生は気になるんですよね。あ、それから今日は私の後輩で……」
　という風に大物の取材も取れたし、最後にはツーショット写真も撮らせてもらえたしで、美咲紀の取材ライフは今日も充実しているのであった。