this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
【お花見】しづ心なく花の散るらむ
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
98
つぎへ >>
まだ学校が三学期だったころ、
鵙海 甫
はなんとなくだが不安に思っていた。
春休みになったら、と。
白い画用紙に少々、水で溶いたグレーの絵の具を垂らした程度に不安に思っていた。
春休みになったら、
千堂 結
と学校で会えなくて寂しくなるかも、と。
けれどもそれはまったくの杞憂に終わった。なぜなら――。
「やっぱり桜は綺麗だねえ」
結がつぶやくように言う。
「ああ、昨日とはまた、違う色のような気もするな」
「そうね、散り始めた気がする……いつか花びらの絨毯が出来るくらい散っちゃうのかな。それもすごく見て見たいけど」
結は顔を上げて青い空と、その空を額縁のように飾る桜の枝と花を見ていた。そうしておもむろに言ったのだった。
「甫君、今日も付き合ってくれてありがとう」
と。
甫の不安はまったくの杞憂に終わっていた。
なぜなら――結とはこうやって、デートする仲になれたのだから。
クラスメートとして学校で顔を合わせるのと、こうして私服で並んで歩くのとはやはり感触が違う。
いつ隣を向いても彼女がいる、そう思うだけで何か、自分がとてつもなく正しいことをしているような気がする。
「川辺に降りてみようか」
甫が提案して、ふたりは石段に足をかける。
「ちょっと思いついたんだが」
照れくさげに甫が言った。本当は、ずっと前に思いついていたのだけどなかなか切り出せなかったのだ。
「乗ってみないか……? あれ」
「スワンボート……?」
そう、スワンボートだ。
白い二人乗りの遊覧ボートで、屋根もあり全体として小型乗用車のようなフォルムをしている。動力は人力、それも、自転車のようなペダルを漕ぐというものだ。ハンドルがありこれで進行方向を定められるというのも、乗用車に似た部分と言えるだろう。
なんといってもその最大の特徴は船首で、白鳥を模した飾りがドンとついていて、どうしたってコミカルさからは逃れられない。けれども白鳥の愛嬌ある顔立ちといい、ぱたぱたと泳ぐように進む姿といい、全体としてはなんだか、おとぎの国の乗り物のようにも見えるのだ。
今も数台泳いでいるが、乗っているのは主として男女のカップルのようだった。
「……乗ってみたい、かも」
うん、と結はうなずいた。自分で自分の言葉に勢いづけられたように、
「テレビとか、そういうのでは見たことあったんだけど、乗ったことはなくて。乗る機会もなかったし……せっかくだし、乗ってお花見しようっ……!」
だんだん言葉に熱がこもってくる。
決まりだな、と甫はもう、財布を取り出して乗船券の値段を見ている。
「結と来れてよかったよ。これって一人じゃなかなか乗る気しないしさ」
スワンボートに乗ってみる。席に腰掛けて気がついた。
意外と、狭い。
必然的に、くっつきあうよにして座ることになる。もしかしたらそれこそが目的でこの狭さになっているのかもしれないが。
「何だか気恥ずかしくなるくらいカップルっぽい乗り物だよね」
甫は結の体温を感じている。
「そうかも……でも、いいよね、実際」
カップルだから、という結の声は、彼女がペダルを漕ぎ出す音にまぎれた。
ぐん、と推力を得て、スワンボートは川に入っていった。リズミカルに漕いで、たちまち川の中ほどに達する。
手漕ぎボートとは違う乗り心地だ。波に揺れるのに自転車のようで、ゆっくりだが風も感じられる。
「ペダルを逆回転したらどうなるんだろ、後ろに進むのかな?」
ふざけて甫は逆に漕いでみた。ちゃんとバックする。飾りだろうと思っていたハンドルも、なかなかどうして優秀だ。こまめに船体を移動できる。
「なるほど、慣れれば自在にボートを動かせそうだな」
と口にしたと同時に、あっ、と甫は声を出しそうになった。
ダメだ勿体ない、と思う。
一人で遊んでいるわけじゃないのだ。隣には、結がいるのだ。
ふたりきりのこの時間を、ボートのステアリングで遊んでつぶすわけにはいかない。
「……ちょっとしたドライブ、って感じじゃないか」
甫は足を止めた。結もならう。
船が止まった。
「ドライブの途中で車を止めたらこんな感じなのかな」
これが気の利いたセリフなのかと問われたらたちまち自信がなくなりそうだが、甫としては精一杯、気を利かせたつもりで言った。
「ドライブ? ……ふふ、足漕ぎ式だから、とってもエコなドライブだよね」
「ああそうか、そうだよな」
結は冗談として流したようだが、ドライブの途中、と言ったことで甫は狭い空間を意識してしまっている。
この空間に彼女とふたりきりなのだ。部屋のようで、ドキドキする。
でもキスなんてしたら、きっと窓から周囲に見えてしまうだろう。
――そうだ、部屋といえば。
「結ってひとり暮らしじゃん? 何でも自分でやっていてすごいよな」
「結果的にそうなっちゃった、って感じかな……だから大したことないよ。それに、甫君だってご両親とは離れて暮らしているよね」
「でも俺は、婆ちゃんが身の回りのことほとんど全部やってくれるから」
互いに親元を離れている同士だ。でも、本当に独りの彼女と、祖父母と暮らす自分のそれとは決定的に違う、と甫は感じる。
寂しくはないのかな、と、思う。
「でもひとりで大変だったりすることがあれば言ってくれよ、直ぐ行くからさ」
心配と大好きと、下心が交じり合った気持ちでそう言ってみる。
「ありがとう」
結は言った。
「私、去年の今頃は……つぎの春、つまり今年に、こうして大事な人と一緒に過ごしてるなんて想像もしてなかった」
甫を見ることができない。うつむき加減に続ける。
「寝子島に来たときだって、ひとりぼっちのままだったかな、とも思ってて……だから、凄く嬉しいんだ。ひとりぼっちじゃないっていうのもそうだけど、私……やっぱり甫君が好きだから」
照れ隠しのように、結はボートを漕ぎ始めた。ゆっくりと白鳥は滑り出す。
「お陰で……少しずつ、気弱だった自分も変わってきたかなって。だんだん、取り戻せてきてるような気がしてるの。こう、元気がみなぎるっていうか……! まだまだだけど……だから」
甫も漕いだ。またぐんぐんと白鳥が泳ぐ。
「改めて、ありがとう。って、言いたかっただけ」
ふふ、と結は顔を上げて笑った。
「俺のほうこそ……」
甫にも、彼女に感謝したいことがたくさんある。どれから言えばいいのかわからないくらいに。多すぎて言葉がつかえそうなほどに。甫が想いにあふれ、溺れそうになったとき、
「わ、すっごく綺麗……!」
結が言った。
「昨日見た桜も綺麗だったけど、ここから見る桜も綺麗……」
いつのまにかボートは、川縁に咲く桜の正面に来ていた。花びらは風に舞い、水面を流れている。
「一時(ひととき)だけ許された絶景だね」
甫には、うなずくことしかできなかった。
「ねえ。私、幸せだよ」
ふっと、舞う桜を吹くようにして結は言った。
いつか、お父さんとお母さんにも……直接お話できたらいいな。
そんなことを考える。
甫くんのこととか、昨日と今日とみた桜の話とか……これまで過ごしたこととか、いっぱい。
<< もどる
1
…
2
3
4
5
6
…
98
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
【お花見】しづ心なく花の散るらむ
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
オールジャンル
定員
1000人
参加キャラクター数
117人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月20日
参加申し込みの期限
2017年05月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!