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【お花見】桜の下で待ち合わせ
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立ち尽くす足元を薄紅の着物を纏うた黒髪の少女が駆けて行く。
子猫のしなやかさと危なっかしさで走る少女の小さな背中を、
神嶋 征一郎
は氷雪の青色した瞳で追う。
少女に笑いかける袴姿の男、飴を手渡し大仰な一礼を見せる軽業師、周りでやんやの喝采をする着物姿の男女たち。桜の花が散るそこは、寝子島では見たこともない城と桜の巨木を背景にした宴の最中。
見慣れぬ光景に唖然として後、ふと気づいて手元を見遣る。己のヴァイオリンケースをきちんと手にしていることにまず安堵する。メンテナンスを終えたばかりのこれを失くすことは、考えるだに眩暈がした。
ととん、と軽い鼓の音を響かせ、剽軽な格好と猿じみた化粧を施した男が近寄ってくる。
「そりゃなんだい兄さん」
とんとんかん、鼓を軽妙に叩きながら声を掛けられ、征一郎は男を一瞥した。ヴァイオリンだ、と低く応じる征一郎の警戒に応えた風もなく、男は白粉に紅い紋様を引いた不思議な化粧の顔で笑った。
「そんなら弾いておくれよ」
宴の雰囲気と強引な男にたじろぐ征一郎の隣、花のように軽やかな足取りで
篠宮 六花
が立つ。柔らかな銀糸の癖っ毛の一房を結んだ金の鈴がちりん、と鳴った。
「すごい」
見慣れぬ、けれど煌びやかな世界に茜色の瞳を奪われつつ、六花は征一郎に淡く微笑みかけた。
「あんたもなんか奏でられるかい」
化粧の男に請われ、六花はどこまでも柔らかく笑む。僅かに背の高い征一郎を見上げ、
「いいぞ、俺も巻き込まれてやるさ」
自身を巻き込むことで征一郎を誘う。真紅の瞳に見据えられ、深い青の瞳が熱情に近い光を宿した。一夜の夢にも似たこの場所でならば、
「聴かせろ、前みたいに」
時に聞き手の感情を激しく揺さぶるほどに激情的な音を奏でるその癖、それを聴かせることを、自分の全てを晒す自身の演奏を恥ずべきものとする彼でも本気を出せるだろう。
(あの音)
妖艶でありながらも無垢で、激情を孕むがゆえに儚く孤独な、あの音色。彼自身は望まぬとするその音色を、覚悟を決めて聴かせて欲しかった。
熱を宿して己の音を求めてくる征一郎の瞳に、六花はけれど恐れを見る。それはたぶん、彼の身に宿ったろっこんに対する怯え。熱情に任せて弓を操り、弦が切れることで己の演奏に耳を傾ける者の聴覚を麻痺させてしまう、もしかすると彼にとっては呪いのような不思議の力。
ろっこんを気にせず弾けたなら、と冷徹なようでいてその実ひどく優しい征一郎は考えているに違いなかった。
「なら、征一郎。お前も」
六花は征一郎を見据える。征一郎がその手に大切に持ったヴァイオリンを見据える。
「……何も怖がらずに弾いてくれ」
征一郎は小さく顎を引いた。
ピアノはありますか、と問う六花に、化粧の男は首を傾げた。手招きして呼んだのは、薄紅の着物纏った幼い少女。紅い瞳した少女はしばらく六花を見つめて後、頷いた。小さな指を桜吹雪の向こうへと伸ばす。吹き抜けた風の先、時代劇の景色に突如として現れた不似合いなグランドピアノの姿に、六花は眼を瞠った。それでもふわり、微笑む。
「優しい幻を、ありがとう」
少女の背をそっと撫で、六花はピアノと対峙した。耳の傍の髪に結わえた鈴を外して着物の帯に押し込む。それを確かめ、征一郎はケースから出したヴァイオリンを手に傍らに立った。
見慣れぬ楽器の共演に、それぞれに花を楽しんでいた人々が不思議そうに楽しそうにふたりの傍へと集まる。
三々五々集まり始める聴衆には構わず、征一郎は即興で弦を弓で弾く。最初は低く、徐々に高く。氷柱に違えて生まれた炎が燃え狂うが如く激しく揺らぐように、音は次第に苦悶の度合いを増してゆく。耳をつんざくほどに高くなる音は、透明でいて頑強な氷殻を破ろうとして破れず、血みどろになって煩悶する青い雛鳥を思わせた。
(征一郎の本気ってえげつないな、おい)
指先すら凍らせるほどに激しいヴァイオリンの狂走に、六花は息を忘れる。
(だが、)
白い瞼を下ろし、上げる。真紅の瞳に灯るは、万年氷をも溶かす炎熱。
(ただ圧倒されるつもりは勿論ない)
限界まで高く、折れるほどに鋭くなるヴァイオリンの音に、ふと。
温かな銀雪を想わせて、ピアノの音が降り注いだ。磨かれ続けるがゆえに尖り続ける氷柱に温かな銀雪が触れる。触れるごと、金銀七色、珠のような音の色が生まれて弾ける。溶けて溢れる音色はまるで人々を魅了し虜にする密やかな蜜のよう。
少年たちが生み出すその音は、決して完全ではない。互いの技巧をぶつけ合う二重奏であるがために不完全で不安定で、そうであるがゆえに咲き初めの光の蕾の如く危うく妖しい魅力を放つ。
溶けた氷の中からまろび出た雛鳥が銀雪に抱かれ、ふたつの音は桜吹雪に溶けて消える。
(俺が俺でいいのなら)
恥ずべきものとした己の音色が救済されたように思えた。己のうちに冷たくわだかまっていた音が昇華されるように思えた。
(この幸福を音色に乗せてお前に捧げよう)
六花の眼差しを受けて、征一郎が次に奏でるはサティの『ジュ・トゥ・ヴー』。それは六花との始まりの曲。
(本当に『本気』で弾いたのは久々か)
征一郎は己の『本気』に応じてくれたヴァイオリンに視線を落とす。
この島に来て、楽しいという感情を再び素直に表現出来るようになった。それは、此処で出会った人々のお陰。今はそう思える。
蠱惑的で狂想的な音を慰撫するように、柔らかな風の音が並ぶ。絡まっては解け、ゆっくりと重なってひとつとなる。桜の花弁が舞う中、二人の音が交差する。
鍵盤を叩き、なぞり、撫で、大切な始まりの曲を奏でながら、六花は知らず艶やかに微笑んだ。この曲は、きっと命ある限り終わることなく心の内で奏で続けよう。
(いや、この命尽き果てても)
そうまで思わせてくれたこの不思議の場に、六花は心からの礼を想う。一生忘れないと誓う。
(だから、聴いていてくれ)
空覆い尽す桜に願う。
(忘れないでくれ)
喝采さえ忘れて耳を傾ける聴衆に一礼し、征一郎は汗の伝う頬のまま六花に告げる。
「君が持つその音は稀有な宝だ。腐らせるな」
「なぁ、征一郎。俺はずっと願ってたよ」
征一郎が宝だと言ってくれた己の音を胸に抱きしめ、六花は微笑む。
「音楽の世界では、征一郎の隣に立っていたいって」
ようやく沸き始めた歓声と六花の言葉を真っ向から受け止めて、征一郎は仄かに瞳を和らげた。突進するように駆けてきた薄紅の着物の少女が、征一郎と六花の手にそれぞれ金色した桜の花片を握らせて去る。
「……自分の隣を望むなら上がってこい」
決闘に応じる闘士のように勝気に、祈り捧げる聖者のように真摯に、花吹雪の先を見つめる。
「先で待ってる」
どこまでも強気な共奏者の言葉に六花は思わずくすりと笑い、そうしてしっかりと頷いた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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