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- 00月00日生 00歳
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賽の目の憂鬱
賽の目の憂鬱
高校生もこの時期は春休み。
桃川 圭花は買い物に行こうと海沿いを歩いていた。本来なら遠回りもいいところなのだが、春の気まぐれに誘われたので断るには悪い気がした。天気も良かったし。
さて折角こちらのルートを通るのなら予定していたお店の他にも寄りたいし買いたい欲に負けお財布の中身と指折り相談しながら、堤防へと目を向けた桂花の足が唐突に止まった。
「おっと？ あれは猫、よね？」
疑問に自問し「確かに猫よ」と確信を込めて自答する。
「珍しいヒョウ柄」
その毛色。色というか、模様。見事なまでの、ヒョウ柄。
無数に等しい多くの猫を島で生活する中見てきたが、衝動的に携帯のカメラを持ち出し証拠の画像を残そうと構える。
幸い猫も逃げる素振りもなさそうで、桂花は彼（か）の猫との距離をジリジリと焦らすように縮めていく。
猫に好かれる質ではないと自覚する桂花なので「もーちょっと近付いてもだいじょぶそう？」と不安になる。そんな彼女の心境など露知らず被写体予定の猫は緩く尻尾を揺らし水平線を眺めているようだった。
枠いっぱいに猫を収めたい桂花が、出来得る限り体を丸め小さくし、呼吸も気配も殺して最後のもう一前進に、じり、と近づいた時、その高波は突如として現れ、一人と一匹を飲み込んだのだった。
ざぶん。と。
いきなりの高波で、避ける暇もない。
「最っ悪」
屈んでた為、堤防の縁を掴み、なんとか海への転落は避けられたものの、一瞬にしてびしょ濡れになった桂花は思わず悪態をついてしまう。
塩水は色々と厄介なのだ。真っ先に痛むだろう髪を気にしつつぶすくれたまま波に押されてズレた眼鏡を直し周りを見回してみる。
海は荒れていない。
元々強い浜風もあの高波を再現するには今は弱い。なんだったのだろうか。誰かが気まぐれか癇癪を起こしたか、どことなく理不尽さを感じ桂花は気持ち悪いなとひとりごちた。
「ん？ あれ、あの猫？」
″そこ″に居たはずの猫が居ない。
「まさか」と予感に桂花が堤防の下を覗き込むと、
「大当たり。
――って全然嬉しくないんだけど」
嬉しくない予想が的中し、半眼になった。握った拳を口元に当てて考える。
「んー、堤防は急な斜面であの子にも登れそうもない、わ、ね……」
自力脱出が不可能なのは一目瞭然だった。このままでは体力が尽きるか沖に流されるかでいずれ溺れ死ぬ。
そして桂花が立っている場所からでは手を伸ばしても到底届きそうにも無い。
となると。
桂花に逡巡は無かった。
一旦堤防から離れ近くの道路まで走った桂花はガードレールに駆け寄ると努めて冷静に眼鏡を外した。力在る両手で桂花がガードレールに触るとろっこん――all in one――がその設置物を″大きめの部品″と″その他″とに分解させる。
それだけに終わらず、彼女は進化能力の引き寄せる力で大きめの部品――ガードレールの一部を運んで海へ落とした。
他の方法も思い付かない彼女は、海面に浮かぶそれらを厳しい眼差しで見下ろした。
「……これでいくしかないわね」
意を決するとは正にこの事。
海面は先程の高波など知らぬ存ぜぬとばかりに穏やかで、なんと腹立たしい。
「ああああ！ もう！！」
葛藤と苛立ちと、奮起が綯（な）い交（ま）ぜになって、それは紛れもない咆哮だった。
桂花は咆えた。
「にゃあ゛あ゛～～～～っ！！！」
ひとしきり奇声をあげた後、桂花は地面を蹴っていた。
飛び込むわ。
不本意ながらも。
足から海面への着地。衝撃と水圧が桂花を襲う。飛び込んだ勢いのまま頭の天辺まで沈んだ桂花は自身の浮力でもって上下の感覚を掴み海面へと顔を出す。
「猫！」
目測違わず猫は近場で溺れていた。
手を伸ばし抱き寄せ「爪立ててもいいからしっかりしがみつくのよ」と男気を見せる桂花に猫は応えた。
自分に従ってくれるらしい猫の頭を「賢い子」と優しく叩き、桂花はガードレールの一部を手繰り寄せると支柱とビーム部の上下を回転させ足がかり、つまり、梯子代わりになるように海中で試行錯誤を繰り返すが立てかける場所がなく上手くいかず、それならばジャンブ台代わりにと半ば力技で挑戦すると、それは成功した。
「あーもー最っ悪」
なんとか堤防の上に避難でき、桂花は潮流に流されていくガードレールを眺め、脱力にへたり込んだ。
「にしても動じないわね」溺れてたのに、桂花の隣りでのほほんとリラックスする猫に、苦笑した。
「元を正せばこのヒョウ柄をカメラに収めようとして高波に……あー！」
塩水の厄介さを桂花は知らないわけではない。
高波に呑まれて海水まみれになったのはなにも桂花や猫だけではない。
これを苦労話として笑い話にできるのはもう少し先の話のようだ。
桃川 圭花は買い物に行こうと海沿いを歩いていた。本来なら遠回りもいいところなのだが、春の気まぐれに誘われたので断るには悪い気がした。天気も良かったし。
さて折角こちらのルートを通るのなら予定していたお店の他にも寄りたいし買いたい欲に負けお財布の中身と指折り相談しながら、堤防へと目を向けた桂花の足が唐突に止まった。
「おっと？ あれは猫、よね？」
疑問に自問し「確かに猫よ」と確信を込めて自答する。
「珍しいヒョウ柄」
その毛色。色というか、模様。見事なまでの、ヒョウ柄。
無数に等しい多くの猫を島で生活する中見てきたが、衝動的に携帯のカメラを持ち出し証拠の画像を残そうと構える。
幸い猫も逃げる素振りもなさそうで、桂花は彼（か）の猫との距離をジリジリと焦らすように縮めていく。
猫に好かれる質ではないと自覚する桂花なので「もーちょっと近付いてもだいじょぶそう？」と不安になる。そんな彼女の心境など露知らず被写体予定の猫は緩く尻尾を揺らし水平線を眺めているようだった。
枠いっぱいに猫を収めたい桂花が、出来得る限り体を丸め小さくし、呼吸も気配も殺して最後のもう一前進に、じり、と近づいた時、その高波は突如として現れ、一人と一匹を飲み込んだのだった。
ざぶん。と。
いきなりの高波で、避ける暇もない。
「最っ悪」
屈んでた為、堤防の縁を掴み、なんとか海への転落は避けられたものの、一瞬にしてびしょ濡れになった桂花は思わず悪態をついてしまう。
塩水は色々と厄介なのだ。真っ先に痛むだろう髪を気にしつつぶすくれたまま波に押されてズレた眼鏡を直し周りを見回してみる。
海は荒れていない。
元々強い浜風もあの高波を再現するには今は弱い。なんだったのだろうか。誰かが気まぐれか癇癪を起こしたか、どことなく理不尽さを感じ桂花は気持ち悪いなとひとりごちた。
「ん？ あれ、あの猫？」
″そこ″に居たはずの猫が居ない。
「まさか」と予感に桂花が堤防の下を覗き込むと、
「大当たり。
――って全然嬉しくないんだけど」
嬉しくない予想が的中し、半眼になった。握った拳を口元に当てて考える。
「んー、堤防は急な斜面であの子にも登れそうもない、わ、ね……」
自力脱出が不可能なのは一目瞭然だった。このままでは体力が尽きるか沖に流されるかでいずれ溺れ死ぬ。
そして桂花が立っている場所からでは手を伸ばしても到底届きそうにも無い。
となると。
桂花に逡巡は無かった。
一旦堤防から離れ近くの道路まで走った桂花はガードレールに駆け寄ると努めて冷静に眼鏡を外した。力在る両手で桂花がガードレールに触るとろっこん――all in one――がその設置物を″大きめの部品″と″その他″とに分解させる。
それだけに終わらず、彼女は進化能力の引き寄せる力で大きめの部品――ガードレールの一部を運んで海へ落とした。
他の方法も思い付かない彼女は、海面に浮かぶそれらを厳しい眼差しで見下ろした。
「……これでいくしかないわね」
意を決するとは正にこの事。
海面は先程の高波など知らぬ存ぜぬとばかりに穏やかで、なんと腹立たしい。
「ああああ！ もう！！」
葛藤と苛立ちと、奮起が綯（な）い交（ま）ぜになって、それは紛れもない咆哮だった。
桂花は咆えた。
「にゃあ゛あ゛～～～～っ！！！」
ひとしきり奇声をあげた後、桂花は地面を蹴っていた。
飛び込むわ。
不本意ながらも。
足から海面への着地。衝撃と水圧が桂花を襲う。飛び込んだ勢いのまま頭の天辺まで沈んだ桂花は自身の浮力でもって上下の感覚を掴み海面へと顔を出す。
「猫！」
目測違わず猫は近場で溺れていた。
手を伸ばし抱き寄せ「爪立ててもいいからしっかりしがみつくのよ」と男気を見せる桂花に猫は応えた。
自分に従ってくれるらしい猫の頭を「賢い子」と優しく叩き、桂花はガードレールの一部を手繰り寄せると支柱とビーム部の上下を回転させ足がかり、つまり、梯子代わりになるように海中で試行錯誤を繰り返すが立てかける場所がなく上手くいかず、それならばジャンブ台代わりにと半ば力技で挑戦すると、それは成功した。
「あーもー最っ悪」
なんとか堤防の上に避難でき、桂花は潮流に流されていくガードレールを眺め、脱力にへたり込んだ。
「にしても動じないわね」溺れてたのに、桂花の隣りでのほほんとリラックスする猫に、苦笑した。
「元を正せばこのヒョウ柄をカメラに収めようとして高波に……あー！」
塩水の厄介さを桂花は知らないわけではない。
高波に呑まれて海水まみれになったのはなにも桂花や猫だけではない。
これを苦労話として笑い話にできるのはもう少し先の話のようだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年04月27日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年05月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年05月04日 11時00分
