＜月華＞秘恋哀華　―裏切られた姫―｜リアクション

＜月華＞秘恋哀華　―裏切られた姫―

起：その始まりを解き明かすために

　――静の国・蓬宮

　寝子島の住人達が集められたその中に、小柄な少女がいた。その正体は……愛らしい猫の姿をしたほしびと、ミーツェ・Ｍ・フェリスだった。
「うな？　『ねこじま』ではないですな？　初めてくる所ですな！」
　ひょこっと白虎族の耳を動かし、ミーツェが辺りを見渡す。と、猫のような笑顔の少女、後木真央が説明をする。
「ここは、月華世界という場所なのだ。今、とっても大変なのだ」
「俺でよければ事情を説明しようか？」
　そう言ったのは志波武道。明るくお茶目な所もある彼だが根は真面目で面倒見が良い。彼はミーツェが頷くのを確認し、事情を説明した。するとミーツェはメモを取りながらこくり、と頷いた。
「そういう事でしたら、力を貸しますな！」
「ありがとう。私としても、頼もしい」
　静かな声が響く。気がつくと、そこに金髪金目の男性が居た。静の国の王、蓮采である。彼は穏やかだがよく通る声で周囲の人々に語りかける。
「さて、皆様方はどちらへ向かわれますか？」
　あまり時間はない、と眼差しで訴える蓮采に、最初に挙手したのは真央だった。
「真央ちゃん、雲の国の神殿書庫にいくのだ。こんな時でないと行けなさそうなのだ。愛憐について調べにいくのだ！」
　にゃふにゃふ、とやる気十分な真央と共に挙手したのは呉井陽太。彼は眼鏡をかけなおしながら真央の傍らに並ぶ。
「オレも真央ちゃんと一緒にいくよ～。愛憐さんは元々雲の国の女王だったっていうし。気になる事もあるんだよね」
　真央は「陽ちゃん先輩も一緒なら心強いのだ！」と嬉しそうに顔を綻ばせる。陽太は「がんばろうね」と優しく真央に語りかけた。

「じゃあ、俺は嵐の国で。準備の方に回ろうか・な？」
　武道はそういうと白虎族の耳を動かした。情報も必要だが、戦争への備えも整えておきたい。そう考えた武道らしい選択だった。
「そうね……。決戦は近そうだもの。準備を整えておくのは重要な事よ。あたしもこっちにまわるわ」
「俺も戦う事しかできない身。こっちの方で手伝うよ」
　たおやかな笑みの尾鎌蛇那伊といつになく真面目な顔の御剣刀が宣言する。と、「はーいっ！」とポニーテールを揺らした椿美咲紀が挙手した。
「こっちで、やりたい事が色々あるのです。武器や防具の手入れだってしておきたいですから！」
「確かにな……」
　美咲紀の言葉に刀が頷き、蛇那伊も楽しげに瞳を細めて微笑んだ。

「白虹が使っていた剣も探すんだよね？　僕はこっちに行ってみるよ」
　と言ったのはサキリ・デイジーカッター。彼が向かうと宣言したのは冥晶宮である。同じように手を上げたのは八神修と優木遥斗だった。
「英雄の武器があるなら……と思ってね。白虹も居るかもしれない、と思ったのもあるけれども」
　修が語るその少し後で、遥斗もまたこくり、と頷く。彼自身も英雄の武具に興味があるらしい。
「そういえばだが、今まで落ち着いてこの世界の全体を知る機会というは無かったな……」
　いい機会だ、ともう一度頷きながら遥斗はゆっくり瞬きする。調査自体は苦手な行動だが、興味がある物をじっくりと調べたい気持ちはあるのだ。

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