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ねこ温泉郷の三日間
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ねこ温泉郷に続く石段の半ばに立つ。
濃紺の星空に白銀に輝く月の光を集め、薄紅の桜が淡く光を帯びている。
ひとひらふたひら、風に撫でられたわけでもなく、花びらが零れて落ちて宙に舞う。
(昼とは全く違うものに見える……)
翡翠の瞳に宵闇と桜を映し、カノンは雪片のような桜に手を伸ばす。春宵に冷えた指先をふわりとすり抜け、花びらは不意に寄せた春風に乗って夜へと躍り上がった。
視線を巡らせれば、夜風に舞い上げられた幾千の花びらが夜色に染まる石段のそこここを彩っている。
(後で部屋で描こう)
そう決めて、今は目前の景色を目に焼き付ける。
「またスゲェな」
背後にぽつり、聞こえた優の声に、カノンは満開の桜を写し取った瞳を向けた。
「で? 何の用だよ」
不愛想に瞬く夜色の瞳に視線を真っすぐに受け止められ、カノンは風に惑う緑の黒髪を片手で抑えて囁く。
「コイバナ……」
「……コイバナ?」
不審げに顰められる優の眉を見つめたまま、カノンは昨夜大部屋で声を掛けてきた黒髪の少女を思い浮かべる。並べた布団の真ん中、小さなライトを頼りに端座し、まるで秘密の会合を始めるかのような真剣な面持ちで、
――コイバナ、しませんか?
彼女はそう誘ってきた。その時は外に出てねこ温泉の宿を描きたい気持ちばかりで断ってしまったものの、
(コイバナって何だろう)
今になって気になった。
(そもそも恋ってどんなもの?)
微かに首を傾げ、カノンは目前に立つ優を見遣る。彼は知っているのだろうか。
「あー……そういや人集めてんの見たなぁ……」
それが何だよ、と興味なさげに問い返した途端、カノンの至極真面目な瞳にぶつかった。咄嗟にたじろぐ。表情に変化の少ない彼女の顔は、桜吹雪の中に立てばひどく儚く美しく、見えた。
「ねえ、ユウ」
髪に肩に桜の花びらを纏わせ、カノンが唇を開く。
「僕に、恋を教えてくれないか」
「……は、はぁっ!?」
思わず上ずる声と共、頬に熱が昇る。
彼女に恋を教えるということは、つまり、
(つまり……!?)
「何言ってんだ行き成り……!」
「ダメ?」
告白紛いの言葉を吐いたその癖、当の本人はどこかきょとんとした顔をしている。そんなに驚くことかな、とでも言いたげなそのまなざしに、優はますます焦った。
「い、いや、ダメって事はねぇが……いやダメなのか? その、そう言うのはこう、二人で何度も会ったり、仲良くなってからだな……常識! 常識的にな! ……そういうモンなんだ! わかったか!」
顔をしかめて焦り、目を伏せて考え込み、かと思えば真剣に怒る。同学年の少女から少女なりの恋心を告白されたと思い込み、あからさまに挙動不審になる少年に、少女は真顔のまま更なる爆弾を落とす。
「僕はコイバナと言うものを知りたいだけなんだけど」
「……は?」
「……何を想像したのかな?」
言葉に詰まる優の頬が桜よりも赤く染まった。
耳まで真っ赤な顔を背けて黙り込む優にもう一度首を傾げ、カノンは夜空を覆いつくすほどに咲き乱れる薄紅の桜を見仰ぐ。
(現実も不思議な事ばかり)
瞼を閉ざし、開く。こうして目にしているこの景色も、寝子島で目にする現実の景色も不思議に溢れているのであれば、今は現実の景色を描こう。
(もう一度空想が見えるまで)
空想の世界を描けなくなった絵描きの少女は、そう静かに誓う。
(描き続けよう)
翡翠の目で今立つ場所を見晴るかす。桜の隧道の下、ねこ温泉宿からふらりと出てきた猫たちがそぞろ歩き、舞い散る桜にじゃれついている。石段の途中には毛氈が敷かれ、夜桜見物に誘い出されたり繰り出したりした人々がそれぞれに弁当を広げたりお茶を淹れたり、寝袋を広げたりしている。
「がおーも猫ちゃんもこっちにカムヒアなのだ」
石段を外れた桜の根元にシートを敷き、その上に更に寝袋を広げて潜り込みながら、真央はろっこんで三毛猫がおーを召喚する。のそのそと現れたふくふくの猫を捕まえて寝袋の中へ引きずり込み、ついでにうっかり近づいてきた別の猫の胴もがっしり掴む。
「お猫さま布団最高なのだ~」
「楽しそうで何よりや」
猫と自分の体温であっという間にぬくぬくになる寝袋に猫じみて目を細める真央の傍、日暮がふらりと立った。石段に腰かける日暮に、真央はうつ伏せに転がったままお弁当の風呂敷を広げる。
「グレちゃんもどうぞなのだ」
「おおきに」
日暮にはおむすびを、猫たちには小魚やまたたびを勧め、真央自身もお弁当の消費にかかる。
「あれ、奥さんとコンちゃんは?」
おむすびを旨そうに口に運ぶ日暮が向けた視線を追えば、少し離れた桜の下、うつらうつらする猫とこんに膝枕しながら温かいお茶を飲む智瑜の傍、夕が同じように湯のみを両手に包んで座している。
「お酒はいかがですか?」
「おおきに。けど、この姿になってからお酒はさっぱりなんです」
小さく肩をすくめる夕に、智瑜は小さく頷く。家で祖父にするように、夕にもお酌をしてあげたかったけれど、飲めないのならば仕方がない。
「夕さんは酔うと甘えるに一票、だったんですが」
悪戯っぽくくすりと笑えば、夕はおどけた様子でめっ、と叱ってみせた。そうしてから、そっと囁く。
「……あんな、智瑜さん」
「はい」
「智瑜さんは気立てのええべっぴんさんですから、智瑜さんに好かれた誰かさんは幸せ者です。智瑜さんは智瑜さんのまんまで居たらええ」
でも、と夕は智瑜の頬に小さな指で触れる。
「誰かのために犠牲になろうとか、そうすれば誰かが幸せになれるとか、そういうことはもう考えんといてください。……智瑜さんも、真央さんも。お願いですから」
いつか、あの黄昏空の世界で日暮の代わりにヒトバシラになろうとしたことを言っているのだと智瑜は気づいた。何かを言おうとして、夕の静かな笑みに言葉を封じられた。
「それはそうと智瑜さん、飴ちゃん食べる?」
以前チョコレートを夜中に食べたことを思い出し、夜に食べると太りますから、と断ろうとして、やっぱり迷う。夕が差し出すべっこう飴はいかにも美味しそうだ。
「じゃあ、ひとつだけ」
「クレオさんも、因さんも、飴ちゃんどうぞ。こういうのほんまにええですねえ、女子会て感じです」
智瑜の掌にひとつ、周囲で温かいお茶を楽しむクレオや因にもひとつずつ、飴を配りながら夕はご機嫌に笑った。
「夜のお花見ってハジメテですっ、夜の桜もキレイですねぇっ」
「ええ、とっても素敵だわ」
はしゃぐ因の隣でクレオも大人びた仕草で目を細める。夜の過ごし方としては、夜桜見物はとても大人っぽいように思う。本当はお酒を呑みつつ夜桜見物と洒落込めればもっと素敵だとは思うけれど、中学一年生にそれはハードルが高すぎる。
お酒の代わりに温かいお茶を含み夜桜を仰ぐクレオの膝に、ぽふり、猫の前肢が触れた。見れば、智瑜と猫じゃらしで遊んでいた猫が勢い余って転がりついでにクレオの膝に乗っかってしまったらしい。
「はわぁ」
まん丸な猫目で見上げられ、クレオは思わず声をあげる。遊ぶに飽きた猫は、今度はクレオの膝で丸くなって眠ることに決めたらしい。
「猫さんあったかいわ~」
膝の上で幾度か足を踏みかえ居場所を定めて丸くなる猫の体温に、クレオは思わずいつのまにやら花より猫、頬を緩めて猫の背を撫でにかかる。
「ねこちゃん、因も温まらせてくださいっ」
クレオと猫の羨ましい様子に因は頬を薔薇色に染めた。飛びつかんばかりにクレオと猫の傍に近づき猫の頭に触れようとしたその途端、猫は気持ちよさげに細めていた目をカッと開いた。毛も尻尾も逆立てて因を威嚇したかと思うと、不意に立ち上がり一目散に逃げだす。
「ふええ、なんでですかぁ~」
桃色の瞳に涙さえ浮かべ、因は悲しい声を上げた。
「ねこちゃんっ」
因の声にも構わず、猫は石段を駆けのぼる。
「おっと」
草履の足元をすり抜けた猫にそう慌てもせずに足を踏みかえ、亨は甚平の袖を夜風に揺らしながら毛氈の端に陣を張る。広げるのは夕方に作り置いた夜食の色々。
「食べるかい」
焼き菓子は桜の下でお茶会をする少女たちに譲り渡す。自分用には味噌豆一盛りとお茶があれば事足りる。
ひいやりとした風に吹かれて舞い散る夜の桜を仰ぐ。
「やっとのんびりできるねぇ」
声を掛けるは、桜の下の女子会の場から少し距離を置いて石段に腰掛け、黒髪紅眼の人形と並んで桜を眺める刀。
「ああ、……そうだな」
穏やかな顔つきで桜を眺め、お茶を飲みながら、刀はただただひたすらに桜の下に座り続ける。
「湯とこの眺めさえあれば、全部が楽しく思えるけれど」
「違いない」
くすりと互いに笑み交わし、少年ふたりはそれぞれに音もなく咲き音もなく散る桜を見つめる。
(何だろうね、怖いくらい綺麗だ)
夜闇を覆い隠し、月より仄かに色づき咲き乱れては散る桜を見つめていれば、この花樹が様々な物語の題材にされる理由が刀には解る気がした。
いい話も悪い話も、怖い話も幸せな話も、
「桜はすべて受け入れてくれる」
誰に聞こえるでもなく呟き、傍らに座すばかりの人形を見下ろす。
「……なんてな」
ルビーの瞳に、この桜はどう映っているのだろう。
桜の下、人々が穏やかに楽し気に過ごすこの光景を、彼女はどう捉えているだろう。
(喜んでくれているかな?)
それだと嬉しい、と僅かに笑んでみせるも、ルヴィアは白い頬にも紅い瞳にも一欠けらの感情を宿しもしない。ただじっと、降りしきる桜吹雪をその瞳に映し続けている。
夜桜見物のみんなの楽し気な声を子守歌代わりに、真央は寝袋に頭まですっぽり潜り込んだ。花びらと一緒になって覆いかぶさってくる睡魔に逆らわず、瞼を閉ざす。
今日はここで猫たちと一緒に眠ろう。
きっと、いい夢が見られる。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年04月03日
参加申し込みの期限
2017年04月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年04月10日 11時00分
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