異世界からの迷い人｜リアクション

異世界からの迷い人

　自室のベッドの縁に腰掛けた八神修は眠そうに目を擦る。目覚めた直後なのか。パジャマを着ていた。
「俺は昨晩、いや、違うな。今日だな、課題に取り組んでいて眠いんだ」
「お天気が最高なのです。ぽかぽかで暖かくて、きっと目が覚めるのです」
　正面に立った椿美咲紀が笑顔で言い切る。全身を黄色で統一した服装に修は眩しそうな表情となった。
「ポニーテールの髪留めが黄色で、コートやブラウスも黄色だな。スカートも同じって、ファッション的にどうなんだ？」
「ブーツも黄色です！　今日の私のラッキーカラーなのですよ！」
「……テレビの占いコーナーが情報源か。それはいいが、来る時にはメールか、電話くらいしてくれよ」
　寝癖の付いた髪に掌を押し当てる。美咲紀は前屈みとなった。人差し指を立てて左右に振って見せる。
「シュー君、時は待ってくれないのです。最高の日には羽を伸ばして、新しい洋服を見て回るのです」
「それが目的か。やれやれだ」
　苦笑いで立ち上がると修はクローゼットに向かった。吊り下げられた無数のスーツを適当に選び出す。
「行き先はシーサイドでいいか」
「もちろん、なのです！」
　意気込んだ声が即座に返ってきた。修はスーツを手にして振り返る。
「今から着替えるから」
「遠慮なく、どうぞ！」
　目を輝かせて答える美咲紀を修は部屋の外に連れ出した。
「少しは遠慮しろ」
　美咲紀は笑顔で受け流す。
　扉を閉めた修は、やれやれ、と笑みを浮かべて呟いた。

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