異世界からの迷い人｜リアクション

異世界からの迷い人

　レイリー・マクティーラが早足で歩く。黒いパーカーのポケットに両手を突っ込み、前傾姿勢となった。鼻筋には皺が寄り、歪んだ口元が開いて鋭い犬歯を見せた。
「クソッ、わけがわからねえ」
　黒髪を乱暴に掻き毟る。偶然に出くわした男の子が声を上げた。
「お兄ちゃんの頭に耳がある！」
「ここじゃ、珍しいのか？」
　毒気を抜かれた顔で立ち止まる。男の子は激しい動作で頷いた。
「初めてみたよ！　それ、本物なの？」
「あー、なんだ。その、飾りみたいなもんで、最近の大人に人気があるんだぜ」
「そうなの？　ボク、知らなかったよ」
　しょんぼりする男の子の頭をポンポンと軽く叩いた。
「大人になればわかるんじゃねえかな」
　レイリーは笑って立ち去った。見つけた脇道に飛び込むと急いでフードを被った。
「……妙なところに迷い込んだもんだぜ」
　別の通りに出た。それなりの人数が行き交う。レイリーは目で人々を追いながら鼻を頻りに動かした。
　――いろんな匂いが混ざってやがる。鼻の感度も悪くなって、イマイチわかんねえな。
　溜息が漏れた。
「誰かに聞くしかねえか」
　前のめりとなって足を速めた。