無人島一泊二日のフシギ旅｜リアクション

無人島一泊二日のフシギ旅

■ひとりの無人島生活……？　逢坂魁の場合
　逢坂魁は考えていることがありました。
　いつも物静かでちょっと眉をよせたような表情をしているので、常になにか考えていそうな彼ですが、今回の考えはちょっといつもと種類が異なるものだったのです。
「『Kneel down here』……俺のろっこん能力を細かく試す機会がほしい」
　クラスの皆が予想している通り、魁は深慮深く理知的な男です。とりまその辺の空き地で試してみよっかなーみたいなことは考えません。
　試すといえば実験ですし、実験といえば環境です。環境といえば、安全性なのです。
　けれど彼とて一介の高校生。特撮番組の爆発シーンで使われる栃木のロケ地とか、見渡す限り誰も居ない砂漠の真ん中とか、もしくはうっそうと茂った無人島の森とか、そういう所でないと困るのです。
　彼の能力は『跪け！』つったら相手が否が応でも跪くという、なんだかサディスティックな能力なのですが、魁自身に無差別な嗜虐趣味はないのです。
　真昼のスクランブル交差点でやったら大変な迷惑になるだろうと、考えただけでも肩が震えるくらいです。
　あと、誰かに『跪け！』て言ってる自分を知らない人に見られると、とてもよくない誤解をうけそうなのです。
「ということで、早速無人島に来てみたわけだが……協力してもらうぞ」
　よく美術用品のお店で売ってるポージング人形に向けて語りかける魁を想像して下さい。
　この時点でもう見られちゃダメな光景ですよね。
　あと、ここからのシーンはとても地味な上に彼の尊厳を奪いそうなので、色々はぶいて結果だけお伝えしましょう。
「１００回の試行を終えたところで結論だが……」
　ノートに書いた内容を読み返して、魁は深くため息をつきました。
「ルールの隙を突くタイプの行動は大体うまくいかないようだ。俺の認識力や考え方が問題なのか、それとも……いや、ここまで実現性が低いのであれば、『うまくいかないもの』と考えておくべきだろう。咄嗟の時に使わなくて本当によかった。いい収穫だった」
　芸術家肌な割にちょっと学者気質な所がある魁でした。

　……と、ここでお話が終わらないのが今回の無人島一泊二日旅行なのです。
「しまった。実験に夢中で他のことを考えていなかった」
　芸術家肌で学者気質な魁だけに、本題をすっかり忘れたまま何も無い夜へ突入するのでした。
　明かりを見つけて人のコミュニティに飛び込むという、彼なりのサバイバルが始まるのです。

　→みんなの無人島生活につづく

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