コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング｜リアクション

コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング

■花とカガクとエトセトラ
「プリンセス・メイクアップ！」
　突然だが変身シーンである。
　椿美咲紀が黄金のティアラを被ると背景が虹色に輝き、身体が宙に浮き上がる。
　女子高生の制服が虹色のプリズムに置き換わり、シルエットが変化していく。
　フリル沢山のドレス姿である。しかしスカートは前を短く後ろを長く、マントのようにシルエットくっきりと映し出しつつ足を長く見せるオシャレなコーディネイトである。そして胸には大きなリボンが生まれ、中央には環状のクリスタルが生まれる。
　くるくると回転しながらいくつものアクセサリーを整えると、どこからともなく現われた花束のようなロッドを手に取った。
　先端が本当に花束になっているロッドである。
　全ての変身を終えた美咲紀はおきまりのポーズで着地してみせた。
「『プリンセスフローラ』！　さんじょうなのです！」
「ふむ……」
　後ろで様子を見ていた八神修、もとい『テクノマスター』は興味深そうに頷いた。
「変身開始から完了までコンマゼロ五秒とは、素晴らしい科学力だ。もう一度変身プロセスを見せてもらえないかな」
「やめてください！　そういう夢を壊すこというの！」
「夢を……こわす……？　それは物理的な破壊という意味かな。ということは地球では夢が物理的に存在している？」
「おしまいー！　この話おしまいですー！」
　腕をぶんぶんやって誤魔化すプリンセスフローラ。
　そこへ都合良く、サブマシンガンを持ったピエロメイクの男たちが現われた。
「敵ですよシューく……テクノマスター！」
「了解。戦闘を開始する」
　テクノマスターは警察手帳のようなプレートを翳すと、四角いバリアーを展開させた。
　飛来する弾丸がバリアーに触れたはじから溶けるように消滅していく。
「ウチューテチョーですね！」
「バリアーパッドだ」
　展開したバリアーごしに銀色の流線構造をした銃を向けるテクノマスター。
　短い連射。不思議な軌道を描いて飛んだエネルギーの弾が相手に命中し、たちまち気絶させていく。
「ウチューガンですね！」
「バイオテイザーだ。プリンセスフローラ、後ろにも敵だ。数３」
「お任せなのです！」
　プリンセスフローラはロッドから長い茨の鞭を作り出すと、敵めがけて素早くはなった。
　地獄からやってきたような小柄な悪鬼たちが茨に縛らればたばたと倒れていく。
「おや？　さっきの敵と違いますね」
　ふしぎですねえと首を傾げていると、天井を通るダクトを破ってゾンビ兵が次々と飛び降りてくる。
　鞭と銃でたちまちに倒す二人だが……。
「ピエロに悪鬼にゾンビですか。ちょっと、一筋縄の事件じゃなさそうなのです」
「地球の悪が手を組んだ可能性がある。外宇宙神を呼び出すつもりかも知れない……」
　なんだか不穏なことを呟くテクノマスター。
「だとしたら今のメンバーでは力不足だ。助っ人が必要だね」
「私、ひとりアテがあるのです」
「奇遇だね。僕もひとりアテがある。後で合流しようか」