コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング｜リアクション

コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング

■Ａパート　ダイアモンドは涙より・リバイバル
　黄金に煌めくシャンデリアの下、ワイングラスを手に開かれた仮面舞踏会。
　まるで浮き世離れした空間で、城山水樹はどこか退屈を感じていた。
　一個でその辺の労働者の年収に匹敵するグラス。一本でそれを超えるワイン。
　うわべの笑顔で富を引き延ばそうとする人々。
　けれど、どこか生命力にかけていた。
　……いや、より正確に述べるなら『乏しい生命力が視覚化できていた』のだ。
　グラスに映る歪んだ自分の顔。
　そして思い出す、ある雨の日。彼女の『ビギンズナイト』。

　あの日、雨が真っ黒に見えていた。
　駆け出しモデルだった彼女を裏路地で襲った悲劇と、それはよく似た色だった。
　真っ黒いボディスーツに身を包んだヒーローが、奇抜なスーツのピエロメイクと戦っていた。
　帰りのタクシー代をけちったからだろうか。それとも女遊びが酷いと評判のプロデューサーから離れたからだろうか。
　裏路地を通りがかった彼女の胸を銃弾が抜けていく。その熱さと冷たさ。
　そして雨と一緒の温度になっていく感覚。
　駆け寄ったヒーローは自らの精神を取り出して、水樹の身体に押し込めていった。
　それが彼の死を意味することだと知ったのは、ずっとずっと後の……病院のベッドでのことだった。

　瞬きをして、グラスを再び見つめる。
　ワインの水面が奇妙に揺れていた。
　何かが来る。
　――と思ったときには、叫びながらグラスを放り投げていた。
「伏せて！」
　豪奢な窓を破壊して、改造自動車が飛び込んでくる。