コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング｜リアクション

コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング

■ガトリングガール、神薙焔！
「収監施設が破られたですって？　ちょっとちょっと、いくらかけたと思ってんのよ」
　通常では考えられないような機動で空中に制止した飛行機から、神薙焔は黒煙の登る巨大刑務所を見下ろしていた。
　刑務所というものは犯罪者を閉じ込めておく場所であって、入れとけばいつの間にかキレイになって出てくるという人間洗濯機じゃあない。開けばそれはもう汚いものがわんさか飛び出してくるものだ。
　刑務所は既に悪人たちの手に落ち、刑務官や周辺住民たちは慌てて避難を始めている。島が悪人たちの手に落ちるのも時間の問題だろう。
「ってことは、アイツも出てきてるのよね。しょーがない……」
　執事に『お出になるのですか？』と問いかけられ、焔は返答するように真っ赤なレバーを引いた。
　自動操縦に切り替わって飛び去っていく飛行機とは対照的に、焔は改造制服の上にパワーアシストアームを装着。ごっついゴーグルも装着すると、飛行機から離脱して降下しはじめた。

「奪え奪え！　我らを止める者などもはやどこにもない！」
　常人の二倍はあろうかという巨漢が、古くヴァイキング時代の鎧甲を纏って腕を振りかざしていた。
　周囲には魔方陣が次々と開き、小柄な悪鬼がわき出ていく。
　そんな中。
「いや、一人だけ居たな。ワシを止めた小娘よ」
　振り向いたその先。
　焔は超衝撃吸収ブーツでもって着地すると、背中にマウントしていた四連装ガトリングガンを腕にそうように展開させた。
「『ガトリングガール』……待っていたぞ、貴様を地獄に引きずり下ろすこの機会をな」
「あたしは一生籠もってて欲しかったわよ！」
　合図と共に飛びかかる無数の悪鬼たち。
　焔――もといガトリングガールは一斉掃射で彼らをはじき飛ばしていく。
　秒間何千発という速度で放たれるゴム弾が悪鬼を打ち払い、次々と気絶させては地獄へ送り返してく。
「フン、こざかしい化学兵器とやらをまだ捨てていなかったか」
「燃えないゴミに出せないのよね、これ」
　地獄大佐は巨大な斧を呼び出すと、ガトリングガールめがけて突撃してくる。
　対してガトリングガールはガトリングガンをパージ。
　代わりに空中の自動操縦（ドローン）飛行機から落とされた大砲を補助アームがキャッチ。自動で金具を固定させると、地獄大佐めがけて照準を合わせた。
　ゴーグルの内側で照準アイコンが動き、自動で相手の顔面にセットされる。
「でもって、新しいお買い物もしてきたってわけよ！」
　手元のレバーを握り込むと同時に放たれる砲弾。
　小ずるいスマイルが落書きされたゴム製の砲弾が地獄大佐の顔面にヒット。
　もんどりうって転倒し、その場に呼び出した魔方陣によって撤退していった。
「ワシだけではこんなものか。だが今夜は、今夜は今まで通りにいかんぞ。不死身の力を手に入れ、貴様などただの小娘だということを教えてやる！」
「不死身の力ねえ……」
　大砲をパージして、ガトリングガールはぼんやりと夜空を見上げた。
　彼女のドローン飛行機がゆっくりと降下してくる。