コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング｜リアクション

コミックヒーローズ　ダークナイト・カミング

デッド・ガイ外伝『墓荒らしたちよ、土へ帰れ！』

■デッド・ガイ外伝『墓荒らしたちよ、土へ帰れ！』
　誰もが寝静まる夜の墓地。
　雷鳴と閃光が照らす十字の墓石に、ショベルをたてる者がいた。
　彼は土を掘り返し棺をむき出しにすると、振り返って仲間を呼んだ。
　頭まで被ったボロ布と、ドクロめいた仮面。全く同じ格好をした彼らは、棺を開いてまだ葬儀を終えて新しい遺体を担ぎ出していく。
　死体袋に遺体を入れた所で、仮面のひとりが『おい見ろ』と仲間に手招きをした。
　誘われて見てみると、まだ日付の新しい墓石がひとつ。
　『これも持ち帰ろう。ボーナスが出るぞ』と籠もった笑いをこぼす仮面たち。
　まるでカルフォルニア･ゴールドラッシュさながらにショベルを突き立て、喜び勇んで棺を開く。
　すると、そこには……。
「『欲張った墓荒らしは墓へ埋まる』……故郷の古いことわざだ」
　目を閉じ、腕を胸の上で組んだ一人の男が埋葬されていた。
　夜のような黒と、苔むしたような緑で構成されたボディスーツ。
　そしてむき出しにされた目元が、ぱっちりと開いた。
　生きている！
　生きているのだ！
　呼吸などまるでもつはずが無い空間で、彼は古代魔術のゾンビーさながらに寝転がっていたというのだ！
「こ、こいつまさか……！」
　スコップを手に後じさりする仮面たち。
　否！
「『グレイブシーフ（墓荒らし）』、かつて命あった者たちへの冒涜許すまじ。っつーことで、天罰の代わりに殴られときな！」
　棺から飛び上がった彼は、かれこそは……！
「『デッド・ガイ！』」
　ボロ布の仮面たち、もといグレイブシーフは更に大きく後じさりすると、まるで最初から用意していたかのように無数のゾンビ兵を呼び出した。
　ぐるりと囲まれたデッド・ガイ。彼は腰から抜いた三段ロッドを展開させて身構える。
「毎度毎度、腐れやべえぜ。人様の遺体をなんだと思ってやがる」
「俺らのもんだと思ってるよ！　かかれ！」
　ナイフや包丁を手にして一斉に飛びかかるゾンビ兵たち。
　みるみるタコ殴りにされるデッド・ガイ……だが、群がるゾンビ兵たちを一瞬にして吹き飛ばしてしまった。
　思い切り殴られていた筈だしなんなら血もびゅーびゅー出ていたはずなのにまるで無傷である。
「とりま、そこの遺体さんは置いていきな」
　デッド・ガイに指さされ、グレイブシーフは慌てて遺体袋を捨てて逃げ出していった。
　だが去り際に、一言だけ。
「これで終わりだと思うなよデッド・ガイ！　我々が地獄の力を手に入れた時には、不死身の貴様も敵では無くなる！」
　とだけ、言い残していった。
　なにいってんだこいつという顔で首を傾げていると……。
『ご苦労、デッド・ガイ。いや……屍骸』
　ことが済んだとみるや、通信ウィンドウが開いた。
　ウィンドウには『プロフェッサー・ハカモリ』と名前が表示されている。
「なあハカセ、俺の登場のしかたもっと派手にならねえのかい。掘り出されなかったらと思うとヒヤヒヤするぜ」
『宝箱に毒を仕掛けてこそ盗賊対策になるというものさ。それより、次の仕事だぞ』
「へいへい。次はどこの墓場で埋まればいいんで？」
『今度は埋まらなくていい。彼らから取り返した遺体を丁寧に埋葬しなおしてやりなさい。手を抜いたら拷問だからな』
　といって、一方的に切れる通信。
　デッド・ガイ……もとい屍骸は頭をがりがりとかいて月の無い夜空を見上げた。
「腐れやべぇぜ」

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